13.08.13

見た目は無愛想な49歳のおっさんだけど…。― ジョニー・マー『ザ・メッセンジャー』 ―

1980年代半ば、英国インディー・ロック・シーンに勃興した 「ネオアコ(ネオ・アコースティック)・ムーヴメント」 が隆盛を極めました。私が20歳のころです。
アズテック・カメラやフェルトら、今の季節よりもう少し暑さが収まって過ぎゆく夏を惜しむ頃に聞きたい、切なさを感じる好バンドが多数輩出されました。
(古い感傷に浸る話ですみません!)

中でも、モリッシーとジョニー・マーのコンビを中心にネオアコ・ムーヴメントの中心バンドだったのがザ・スミスです。
活動期間は約4年と短いものでしたが、モリッシーの書く文学的で繊細、ときに辛辣な詩とマーの書く切ないメロディー、そして切れのいい軽やかなストロークやリリカルなギター・リフはそれまで聞いたことがないほど鮮烈な個性に溢れ、同世代ということもあって素直に共感できるものでした。

ロックミュージシャンの概念を覆すようなモリッシーという個性派シンガーをバンド結成に際し自宅から連れ出したこともその功績に数えられるギタリスト ジョニー・マー。熱心なファンに加えてミュージシャンにも信奉者の多いマーが5月にザ・スミス解散後25年目にして待望の1st ソロアルバム “ ザ・メッセンジャー ” をリリースしました。

 ↓ ザ・スミスが脳裏によみがえる!新譜 “ ザ・メッセンジャー ” より
   ” New Town Velocity ”


ドラムス以外をすべて自分でプレイし、アレンジ、プロデュース、スタジオ・ワークとすべてを自ら手がけた12曲。
まず際立つのは天賦のメロディーセンス!ザ・スミス時代と変わることない切なく繊細なメロディー、鳥肌立ちます。
一方、ザ・スミスのサウンドに見られた2つの大きな個性(ポリシー)、
「ディジタルメソッドを使用しない」ことと「コーラスワークがまったくない」
ことは時代相応の適度な味付けとして取り入れられ変化が見られますが、あくまでサウンドの根幹はリリカルなギター・リフや軽やかなストロークなど端正なギターの音色です。ファンが待ち望んでいたマーがここにやっと帰って来てくれた、と歓喜する思いでした。

元相棒のモリッシーもこのところ持ち味を遺憾なく発揮した充実作を連発している今、ザ・スミスを旅立った2人の稀代のアーティストが元気な姿で輝いているのを見られることは、多感な時期に彼らのメッセージに触れ、アーティストとして、同世代の若者たちとしてリスペクトしてきた1人として幸せです。
モリッシー作品にマーの影を探すことも、マーの客演と裏方ばかりの活動に「もっと表に出てやってくれないかなあ」ともどかしさを感じることも、この分だともう必要ないのかな。



[” THE MESSENGER ” HOSTESS, 定価2,490円]

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