▼2011 年 11 月 のアーカイブ

11.11.20

オーストリア皇太子 フランツ・フェルディナント公とその時代めぐって2題

オーストリア「皇太子」の日本訪問 訳・著 渡辺 肇

オーストリア「皇太子」の日本訪問 訳・著 渡辺 肇



新刊!『オーストリア「皇太子」の日本訪問』 ただし非売品です…

10月、1冊の書籍が完成しました。

         『オーストリア「皇太子」の日本訪問』

弊社の書棚に乗ることのない「新刊」です。
著者は渡辺 肇(はじむ)倉敷芸術科学大学教授。国際金融を専門とするベテラン研究者です。書棚に乗ることがない、とは図書コードの付いていない自費出版の形なんです。

書籍の中核をなすのは、国賓として明治時代中期の日本を訪問したオーストリア皇太子 フランツ・フェルディナントの著した訪問記の日本語訳。その他、渡辺教授による欧州訪問記5編が収められています。

フランツ・フェルディナント公(文中写真)

フランツ・フェルディナント公(文中写真)


1914年6月28日にサラエボ市内で暗殺された事件が第一次世界大戦の発端となったことで知られるオーストリア皇太子 フランツ・フェルディナントは、1893(明治26)年8月に日本を訪問し、長崎から熊本、京都、大阪、奈良、名古屋、箱根、東京、横浜などをめぐって宮城に明治天皇を表敬訪問もしています。自ら筆を取り、紀行文として書かれた本稿には日本の国内の様子が詳細に描写されていて、数多くの写真も付されています。当時を伝える貴重な史料として価値あるものです。

最近、書店でもこうした史料を書籍化したものをたくさん見かけますが、それらと見比べても資料の貴重さという点でそん色ないと思われますし、訳者はかつて企業のウイーン支社長として赴任した経験を持ち現地の文化にも造詣が深い人物なので、現地でしか見ることのできない写真も数多く紹介されていて(現地の公立博物館より許諾を得て転載)、非常に充実した内容となっています。

装丁も含め、売り本として十分に成立する水準だけに、担当者としては図書コードなしという点のみが気分的にやや複雑…。

文中の写真ページ1

 文中の写真ページ1


航海時の服装や船上の様子がよく伝わってきます。
暗殺された時に乗っていた乗用車や着用していて血染めになった軍服は、保存・展示されているのですね(ウイーン軍事史博物館)。

文中の写真ページ2

 文中の写真ページ2


他にも、熊本城、名古屋城など日本国内の名所が当時の姿で収められた写真、大阪・梅田駅などの今とは全く様子の異なる様が映っている写真など、貴重なショットが満載です。


最近こうした書籍をたくさん見かけますが、
史料としての貴重さではそん色ないはず。
でも、残念ながらご購入いただくことはできません…。



美しい映像と頑固で冷徹なハネケ・ワールド

2009年、カンヌ映画祭のグランプリ「パルム・ドール」を受賞したミヒャエル・ハネケ監督のドイツ映画
        「白いリボン」

は、フランツ・フェルディナント公夫妻がサラエボで暗殺されて第一次世界大戦の開戦へと流れゆく時代のドイツ北部の農村を舞台にしたドラマです。

淡淡とした展開、美しい農村の風景とセピア調の自然光を生かした映像の中に、人の「心」の脆さというか些細なきっかけで地域の信頼関係が崩れる様が描かれた、観る者に不安感を抱かせるような映画、エンターテインメント性を徹底して排除したハネケ監督らしい作品です。
ドイツの寒村で続けざまに起こる小さな事件が積み重なり、住民が互いの信頼関係の喪失に追い込まれていくさま、支配する立場の者たちが無意識のうちにどんどんと弱者を追いこんでいくさまが描かれていて、忍び寄る不穏な時代の空気をうかがわせる…といったトーンです。

過剰な演出は一切なく、音楽も劇中の讃美歌を除いては一切使われていません。長回しのシーンも多いので、出演者にとっては緊張を強いられる現場だったのかなーとうかがえます。
作品の質感こそ全く異なるものの、その演出のみをとれば、日本の生んだ映画界の巨星、小津安二郎監督の影響も垣間見えました。2人の登場人物が会話するシーンでカメラの位置が右、左、右、左と入れ替わる、小津監督お得意のカメラワークもしっかり引用されていました。

この映画、一言でテーマを語ることはもちろんできませんが、とっさに浮かんだのは

         『北風』はダメ!  『北風』はダメ!  『太陽』で!

てな言葉でした。
乱暴なまとめ方ですみません。だけど、真理だと思います。さすがハネケ監督。



[2009年ドイツ 監督:ミヒャエル・ハネケ]

※ 誰でも知っているような著名な俳優さんは1人も出演していないし、最初は登場人物の相関関係を頭で整理するのに苦労しました。2度、3度と繰り返し観ていくうちに、だんだんとその怖さ、不安さが見えてきます。時間をかけてじっくり鑑賞するのがお勧めです。
公式サイトはこちらです。

11.11.07

社員旅行に行ってきました

11月5日、年に一度の社員旅行に参加し、広島県尾道市と愛媛県今治市を島伝いに結ぶ架け橋「しまなみ海道」をバスで巡りながら3つの島に降りて観光してきました。
ふくろう出版は社員旅行があるのです。なかなかやるでしょ…かな?



[神神と国宝の島 大三島]

全然知りませんでしたが愛媛県の大三島は「国宝の島」。その所以となっている大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)は、全国でも6社しかない「国幣大社」とのこと。
それだけでなく「全国各地に一万社余りある山祇神社、三島神社の総本社」「伊予国一宮」「日本国総鎮守」と、にわか調べでは難しくて書けませんが、数数の顔を持っているようで、ともかく格式の高い神社です。
平安・鎌倉・南北朝時代の歴歴の武将が武具甲冑や薙刀、太刀を奉納し、近代以降も初代首相 伊藤博文や旧帝国海軍連合艦隊司令長官 山本五十六など、歴史上の人物が多数参拝に訪れているとのこと。
三島神社の総本社だから鎮座地であるこの地の名が大三島…。「大三+島」でなく「大+三島」なのかな?とちょっと疑問に思いました。疑問はまだ解けていないので、機会があったら調べてみたいです。

大山祇神社パンフレットと国宝館拝観券

大山祇神社パンフレットと国宝館拝観券

樹齢2,600年のクス

参道には樹齢2,600年とされるクスの巨樹

参道の大クスに添えられた由緒書きには乎知命(おちのみこと)の手植えとの伝承が見えます

参道の大クスに添えられた由緒書きには乎知命(おちのみこと)の御手植えとの伝承が見えます




境内の「国宝館」は圧巻でした。源頼朝、源義経をはじめとする歴歴の武将が奉納した武具甲冑や武蔵坊弁慶の奉納物とされる薙刀、後村上天皇、護良親王が奉納した太刀などその名に恥じない国宝、重要文化財の数数。国立博物館に鎮座していてもおかしくないであろうお宝が所狭しと並んでいました。
また「日本海事博物館」という、昭和天皇の海洋生物研究に使われた船「葉山丸」がフロア中央に鎮座する博物館もありました。

神社境内の国宝館外観

神社境内の国宝館外観

館内は武具甲冑、薙刀、太刀と国宝のオンパレード(画像はパンフレットより)

館内は武具甲冑、薙刀、太刀と国宝が所狭しと並びます(画像はパンフレットより)




[昭和の商店街とコロッケ 生口島]

新鮮な瀬戸内の魚貝を昼食にしまなみ最南端の大島でいただき、大島で折り返して午後の見学は広島県の生口島へ。かつては瀬戸田町、今は尾道市となっていて、古くからの観光地 耕三寺と、故平山郁夫画伯の出生地として知られ平山画伯の作品のみを所蔵、展示する平山郁夫美術館で有名な島。
島全体にいくつもサイクリングコースが設けられているようです。この日は朝からあいにくの雨模様でしたが、晴れの日には抜群に気持よさそうですね。

サインリングロード案内の路上ペインティング

サインリングロードを案内する瀬戸田町内の路上のペインティング




この日、耕三寺or美術館を事前に選択して行ったのですが、私のチョイスは美術館でした。雨を予感したわけではないけど、結果的には当たりだったかな?

生口島で思わずテンションが上がったのは、昭和のたたずまいに満ちた「しおまち商店街」とコロッケが名物の「岡哲商店」さん。
岡哲商店さんには、来店した芸能人の色紙が壁一面にいっぱいありました。コロッケは1個80円。昼食を腹がはち切れるくらい食べたばかりなのに、また買い食い…。

人懐っこい笑顔が魅力の岡哲商店のおばちゃん。コロッケ1個80円は1個から購入OKでお味もGOOD!

人懐っこい笑顔が魅力の岡哲商店のおばちゃん。コロッケ1個80円は1個から購入OKでお味もGOOD!

昭和の面影を色濃く残す「しおまち商店街」のたたずまい。コロッケの旨さとこの雰囲気は相乗効果になっているのでは?

昭和の面影を色濃く残す「しおまち商店街」のたたずまい。コロッケの旨さとこの雰囲気は相乗効果を呼んでいるのでは?

平山郁夫美術館の正門

平山郁夫美術館の正門。バーミアン石仏が破壊されて10年になることに因み、平和への願いを込めた特別展を開催中(~11月23日)




天気はあいにくでしたが、仕事では通過するだけだった「しまなみ海道」をじっくりと巡り、情緒あふれる島島の姿にふれることのできた貴重な体験でした。幹事を務められた社員の皆さん、どうもありがとうございました。
このほかにも、みかんと造船と東ちづる&ポルノグラフィティの出身地で知られる因島や「伯方の塩」が有名な伯方島と、本当に芸予諸島はそれぞれ個性豊かです。
他の島も一度訪れてみないといけませんね。

あこう他お造り3種盛(大島 海宿千年松で)

アコウ他3種盛の豪華なお造り。新鮮で甘味が感じられておいしかった(大島 海宿千年松で)