▼‘趣味’ カテゴリーのアーカイブ

14.06.16

I LOVE CHOPIN!

荘厳な調べの「カノン」を聴くといつも、虫になった女の話を思い出してしまうもっちです
 

「パッヘルベルのカノン~バロック名曲集」


「蛹化(むし)の女~蜷川実花セレクション」
このジャケット写真も、耽美で退廃的な歌の世界観によく合っていると思います。

というわけで(?)、今回のテーマは「クラシック(音楽)」。
今年に入り、岡山開催のクラシックコンサートに何度か行く機会があったのですが、
Amazonさんから届いたメールを見て、クラシック月間だった1~2月のことが蘇りました。

まずは「西本智実&イルミナートフィルハーモニーオーケストラ NEW YEAR CONCERT 2014」

一度は行ってみたいと思っていた西本智実さん指揮のコンサート。
無料招待券をgetした友人の御相伴にあずかりました。ありがとー!

ドヴォルザーク「新世界より」とかも良かったのですが、

「ドヴォルザーク:交響曲第9番」

一番興奮したのはアンコール曲の「リベルタンゴ」
イルミナートフィルの為にされたというアレンジが、ものすごくかっこよかったです!カコ(・∀・)イイ!!
奏者の方達もノリノリで、楽器をグルングルン回してました。(@◇@)

「Libertango」 [CD, Import]

そして最後の曲では、西本さんが観客に向かって指揮棒を振るというサービス(?)が!
美しく颯爽たる指揮の元、場内には不思議な一体感が生まれました。

『指揮者・西本智実 静かなる革命』

続いては、「牛田智大 ピアノリサイタル」
天才少年ピアニストとしてTVなどでも度々紹介され、その可愛らしい容姿と礼儀正しい受け答えで、奥様方のハートを鷲掴みの、あの牛田君です。

か、かわいい・・・

「献呈~リスト&ショパン名曲集」(初回限定盤)(DVD付)

ショパンとリストが中心の構成でした。
演奏前のペコリ(o*。_。)o。かわいいーーー
しかし演奏が始まると、途端にその音場に引き込まれます。
まず思ったのは「ショパンが似合う!」ということ。
ショパンは昔から好きなのですが、パフォーマンスにおいてあれほどショパンが似合うと思ったのは、(浅田)真央ちゃん以来でした。
優雅でなめらかで、ホント、うっとりです。。。

真央ちゃんの「ノクターン」。
何年か前のプログラムでも使われていましたが、2013-2014年SPの「ノクターン」はさらに磨きがかかり、ほんっとに素敵でしたよね。

浅田真央『Smile』~氷上の妖精10年の軌跡~ [DVD]

愛の夢」も、すごく似合っていましたよね。牛田君も真央ちゃんも。

日本人クラシックピアニストとしては、史上最年少(12歳)でのCDデビューでした。

「愛の夢~牛田智大デビュー(初回限定盤)(DVD付)」

現在14歳。その演奏に若さはあっても、幼さを感じることはありませんでした。

ちょっと意外だったのは、リストの「ラ・カンパネラ」。
すごく良かった!圧巻でした。

そして以前より、フィギュアスケート羽生結弦選手の大ファンだと公言している牛田君。


『蒼い炎』

いつかコラボとかできるとステキですよね。
と思っていたら、先日Amazonさんにお薦めされたのが、7月発売となるこちら。

「トロイメライ~ロマンティック・ピアノ名曲集(初回限定盤)(DVD付)」

大きくなってる~~~。
「卓越したテクニックに深い音楽解釈が加わり、精神的、肉体的に著しい成長を遂げた牛田のピアノの音色を聞くことができる作品。(Amazon「商品の説明」より)」
著しい成長、まさに!1月のリサイタル時より、明らかに成長しているのが分かります。

そして注目すべきは
    12曲目、パリの散歩道
    13曲目、ロミオとジュリエット

羽生選手への応援の気持ちをこめての収録だそうです。
2人のコラボレーション実現に向けて、既に大人は動いていると思います!

そして最後は、「辻井伸行&オルフェウス室内管弦楽団 日本ツアー2014」
辻井さんの演奏も、一度生で聞いてみたいと思っていました。
指揮者を置かず、メンバーの話し合いによって音楽を完成させるという、世界でも極めて珍しいオーケストラ、オルフェウス室内管弦楽団とのコラボレーションです。
西本さんのコンサートで、指揮者による演奏の違いというものに興味が出てきたところだったので、「指揮者のいないオーケストラ」というものにも興味津々でした。

『オルフェウスプロセス―指揮者のいないオーケストラに学ぶマルチ・リーダーシップ・マネジメント』


「辻井伸行 世界が感動した奇跡のコンクール・ドキュメント」[CD+DVD]

オーケストラとの共演も良かったのですが、一番胸に迫るものがあったのは、アンコールのソロ演奏、
ショパンの「革命のエチュード」でした。
あれ?(^^;)

結論
やっぱり、ショパンはいい!!



「英雄ポロネーズ、ラ・カンパネラ~日本ツアー≪ショパン&リスト≫ スペシャルCD 」

そして、ショパンを学術的側面から捉えたのがこちら。
ポーランドが誇る偉才、ショパンのポロネーズに関する考察ほか、4本の講演を収録。

ポロネーズをめぐって -フォーラム・ポーランド2012年会議録―

ショパン論の最前線!
『フォーラム・ポーランド2009年会議録』

2010年に生誕200周年を迎えることを記念し2009年に開かれた、フレデリック・ショパンがテーマの会議録。
「民族の作曲家としてのショパン-ある私物化の物語」、「《近代小説》の主人公としてのショパン」、「ショパンの手稿譜について」など興味深い着想による5本の講演と、パネル・ディスカッションの様子を収録。日本語版・ポーランド語版を併載しています。

6/17 追記
牛田君の「パリの散歩道」他ですが、iTunes Storeで一足先に配信されていたので聴いてみました。
「パリの散歩道」、「ロミオとジュリット」の他、真央ちゃんの「ノクターン第2番」、「愛の夢」の4曲。
牛田君自身の手によるという編曲が、どれもすごく良かった!絶品です!

14.06.10

ボストンの北斎、日本に里帰り中

先日、神戸市立博物館で開催中の「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」に行ってきました。
世界屈指の日本美術コレクションで知られる米国・ボストン美術館所蔵の北斎作品の数々が、現在日本に里帰り中なのです。
代表作「冨嶽三十六景」や「諸国瀧廻り」、「百物語」などの他、世界中でボストン美術館にしかないという珍しい作品も出品されています。
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絵画には全く詳しくない私ですが、なぜだか浮世絵はとっつきやすく、面白いな~と思っていました。
マンガチックなデフォルメ具合に惹かれるのかもしれません。

今回の北斎作品、緻密さや躍動感の素晴らしさはもちろんのこと、そこに描かれた当時の風俗そのものにも興味をそそられます。
「○○という版元から出版されたものです」などという説明があると、「版元(出版社のこと)」っていう言葉もこのころからあるんだよなぁと、しばし感慨にふけったりもしてみました。
また、解剖学的にみてもかなり正確だという骸骨や、西洋絵画を意識したと思われるもの、だまし絵(隠し絵?)みたいなものなど、実験的試みや遊び心のあるものも多く見られ、晩年になってなお、
猫一匹すら(満足に)描けねぇ
と嘆いたといわれる北斎のあくなき向上心、好奇心をうかがうことができます。


『もっと知りたい葛飾北斎―生涯と作品』

そして浮世絵といえば、歌舞伎とも縁が深いということで、音声ガイドのナビゲーターは四代目市川猿之助さんでした。

『祝!四代目市川猿之助襲名記念 僕は、亀治郎でした。』

その猿之助さんも出演されていた「伝統芸能の今」という公演が先月倉敷でありました。
津軽三味線と狂言のコラボ、津軽三味線をバックにした猿之助さんの創作舞踊、一つの演目を狂言と歌舞伎で演じるなど、異ジャンルのアーティストたちによるコラボレーション、すごく面白い舞台でした。
「ゴールドリボン」と「世界の子どもにワクチンを」のチャリティー企画ということで、演者さんたち自ら募金箱を持ったり、客席を回ってのプログラム(手ぬぐい付き)販売などもされていました。
かなり間近で拝見した猿之助さんのお顔(たぶんすっぴん)は、毎日白塗り厚塗りしているはずなのに、スベスベつるつる、すごくキレイでびっくりしました!秘訣を教えてください!!
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昨年あたりから、様々なジャンルのコラボ芸術舞台をいくつか見る機会がありました。
それらの斬新な試みは「邪道」といわれることもあるでしょう。
ですが素人にとっては、とっつきやすくて面白い。
入り口としては、そういうものもあってよいのではないかと思います。

そして時には、そんな素人目線、というか「外からの視点」というのが大きな意味を持つことがあります。
明治維新以降、西洋志向が強まり、伝統文化は軽んじられていった。
多くの日本美術品が市場に放出され、二束三文で扱われたといわれています。
そんな時、日本美術に魅せられ、価値を認めたのは異国の人々でした。


『ボストン美術館秘蔵 スポルディング・コレクション名作選』

素晴らしい日本美術品の多くが今、ボストンにある。
それを文化財の海外流出と捉えると残念な気もしますが、その後の歴史を考えると、もしも海を渡っていなければ、現在まで残ってはいなかったかもしれない、とも思えます。
そして何より、今なお鮮やかな色彩を放つ北斎作品の、その保存状態のよさに、とても大事にされてきたのだということが見てとれ、「ボストン、ありがとう!」 という感謝の思いで一杯になるのです。

今回出品されている作品は、少なくとも今後50年間、他館への貸し出しはもちろん、ボストン美術館においてですら公開はしないといわれています。
人気のため混雑は必至ですが、興味がおありの方は、この機会に是非!!


『北斎決定版』

海外では「BIG WAVE」と呼ばれる「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」。
それにインスピレーションを受けて作られたのが、ドビュッシーの代表作、交響詩「海」。

「ドビュッシー:管弦楽曲集」

20世紀を代表する建築家、フランク・ロイド・ライトも浮世絵に魅せられた一人でした。
ボストンの大富豪、ウィリアム・スチュアートとジョン・テイラー・スポルディング兄弟がボストン美術館に寄贈した多くの浮世絵版画は、当時日本に滞在していたライトを通じて購入したものなのだそうです。

フランク・ロイド・ライトの建築遺産

朝一が比較的すいているとの噂ですが、私は土曜日限定の「イブニング・レクチャー(学芸員さんによる展覧会の見どころ解説)」狙いで、夕方5時前に到着しました。
その時点で45分の入館待ち!!
ですが、展示コーナーには入れずとも、レクチャーの行われる講堂には入れるのです!
何だかお得!
土曜日夕方、お薦めです!

13.12.11

小津安二郎監督、没後50年を前に<2 映画感想>

「あとから、せんぐりせんぐり生まれてくるわ」
-『小早川家の秋』(小津安二郎 脚本・監督、
  原 節子、中村鴈治郎、森繁久弥他 出演、東宝、1961)-


「あとから、せんぐりせんぐり生まれてくるわ」

「せんぐりせんぐり」とは、「繰り返して、順繰りに」との意味。関西の言葉でしょうか?起源の古い言葉なのでしょう。
この短い台詞に、吉田喜重監督が評論の中で繰り返し述べている「小津映画の小津映画たるゆえん」が垣間見えた気がしました。

エンディングも近づいた一場面、珍しく端役での登場だった農夫役 笠智衆さんの台詞です。
晴れ渡る秋の虚空に突き出した火葬場の煙突から噴き出す煙。
川岸で農具を洗いながら、夫婦の農夫がそれを眺めている。
若い人だったら気の毒だと同情する妻にこたえて、夫は冒頭の台詞をひとり言のようにつぶやくのです。

短くてさりげないため、聞き逃してすらしまいかねないこの台詞こそ、他の作品には見当たらない小津監督自身の独白、自らの死生観をつぶやいたものに他ならないと私には思えました。

「元来、人は来る日も来る日も昨日と同じ生活、反復を続けるもの。変わらぬ日常こそがドラマであり、そのドラマを撮り続けることを小津監督は自らに課したのではないか」

と評論『小津安二郎の反映画』の中で著者 吉田喜重監督が推察していますが、これを受け、僭越にも私は次のように思いました。
――親から子へ、子から孫へと、人びとは次の世代にバトンを繋ぎ、「血」が守られ生活が受け継がれていく。絶えることのない反復。それを最小限の言葉で端的に語ったのが、冒頭の台詞に他ならないのではないか。

――何も起こらぬ日常こそがドラマ……。逆説的ではあるが、小津映画を語る上でこれ以上の真理は見当たらないのではないだろうか?だからこそ、俳優たちは過剰な演技を一切排し、ごく自然に振る舞うことを徹底して求められたのではないだろうか。

「小早川家の秋」は松竹ではなく、東宝映画作品として作られ、封切られた作品です。
印象的なカラー、おなじみのカメラアングルなど映像はいつもながらの魅力あふれるものですが、松竹作品とはどこか違っていて、出演陣も、原節子さんら小津組のレギュラー陣に加えて中村鴈治郎や東映の個性派俳優、森繁久弥、宝田明、小林桂樹、新珠三千代がずらっと顔を並べ他流試合のイメージもあります。

それでも、相変わらず女優さんらは皆とても美しいし、秋真っ盛りの大阪、京都の古い街並を美しく切り取った枕カット等、小津監督ならではの熟練の技、演出が冴えわたっています。

また、この作品に限ったことでなく、小津映画のもう1つの得がたい魅力として、脚本や演出で家族を思いやる人びとの美しい心持、そして美しい穏やかな日本語を丹念に描いていることが挙げられると思います。

「秋日和」で親子を演じたばかりの原節子さんと司葉子さんが義理の姉妹に姿を変え、京都・嵐山の桂川のほとりを会話を交わしながら歩くシーンがありますが、画面から美しい日本人の心がにじみ出てくるようで清清しい感動を覚えます。

小津監督の映画作品が欧米など海外で高く評価されていますが、1つには、こうしたつつましくて美しい日本人の姿が好感を呼び、作品の評価につながっているのではないかとも思われ(勝手な解釈ですが)、日本人であることを非常に嬉しく誇らしく思う気持ちになれます。

1960年の「秋日和」に続いて主演した原節子さんにとって、この映画は最後の小津監督作品の出演となりました。
小津監督の没後、一切の芸能活動を中止して引退した女優 原節子としても最晩期の作品といえると思います。



「小早川家の秋」(小津安二郎 脚本・監督、
 原 節子、中村鴈治郎、森繁久弥他出演、東宝、1961)

13.12.11

小津安二郎監督、没後50年を前に<1 読書感想>

平成25年12月12日は戦前から長く活躍し、戦後「東京物語」(1953、松竹)をはじめ輝かしい名作を数多く残した映画監督 小津安二郎氏が60歳の誕生日に他界してから50度目の命日になります。

数限りなくある小津映画論の中でも決定版と言えるのではないかと思う、松竹の後輩にあたる映画監督 吉田喜重氏の小津映画評論『小津安二郎の反映画』を読み返し、小津監督晩年の作品『小早川家の秋』DVDを再鑑賞しました。
長くなったので、評論と映画の2つに分けて、感想を綴りました。



映画はドラマだ、アクシデントではない
-『小津安二郎の反映画』(吉田喜重著、岩波現代文庫、2011)-


「映画はドラマだ、アクシデントではない」
これは、他界する1か月前に病床の小津監督を見舞った吉田監督と妻である女優の岡田茉利子さんが帰る際、小津監督に掛けられた一言です。

同じ年の正月に開かれた新年会での一幕、そしてこの一言の真意を探り、また代表的作品の脚本やカットを数多く取り上げて、大胆かつ細心にその精神的支柱をさぐり、自らの言葉で結論付けた著者。30代半ばで召集され、経験した軍隊生活の影響を色濃く残しながら、戦後の作品で確立するにいたった「反映画」ともいうべき唯一無二の個性がスクリーンを超えて見えてくる気がします。



小津安二郎の「反映画」とは
戦前のサイレント映画時代からのキャリアを持ち、特に戦後の作品群は日本映画の黄金期を飾る名作として国内外で高く評価されている小津映画。その本質が「反映画」であると著者 吉田喜重監督は説いています。これはどういうことか?

著者は注意深く作品を眺め、小津監督の映画に向かう内なるスタンスを2つの根拠から「反映画」として導き出していました。1つは「カメラで切り取られた画面は真実を映し出してはいない」と、技術としての映像化に疑問を呈し、背を向けていること。もう1つは「映画を観る者すべてが映像から共通の意味を読み取ること」に懐疑的であること。

それゆえ、小津映画においてカメラはただ冷徹に静謐に、そこにある事実を映し続けるのみとなっています。これは素人である私たち観賞者にも一目で分かる、小津映画最大の個性ですよね。多くの監督や観客の持つ映画の概念とは対極の考え方、アプローチであり、著者が「反映画」との表現を用いた理由のようです。



僕はトウフ屋だからトウフしか作らない
「最大の魅力が「反映画」であること」
と言わざるを得ないように、小津映画は一筋縄でいかない、時には矛盾をもはらむものとなっているのですが、小津監督は自らをトウフ屋つまり職人(≠芸術家)になぞらえ、家族の物語を描き続けることを宣し、映画に限りない愛情を持ち、遺作となった『秋刀魚の味』で自らのターニングポイントとなった『晩春』を再現してみせたように絶えず映画と、家族と向き合い続け、輝ける名作の数数を世に遺しました。

この評論は、そんな小津映画への深い敬愛の念を根底に持ちながら、ただ賛辞のみを展開するものではありません。深い洞察は、ある部分では私たち素人の浅はかな思い入れを根底から覆されもします。しかし、取りも直さずそれは『小早川家の秋』を手始めに、今一度違った視点から小津映画を楽しむ喜びを与えてくれるものに他ならないと思います。



『小津安二郎の反映画』(吉田喜重著、岩波現代文庫、2011)



13.11.18

追悼 ルー・リード(1942/3/2-2013/10/27)~遺作『LULU』を聴く

先日、10月27日にアメリカ人のロック・アーティスト、ルー・リード (Lou Reed) が71歳で他界しました。
私は熱心なリスナーというほどではありませんが、1960年代末にヴェルヴェット・アンダーグラウンド (The Velvet Underground) のメンバーとしてデビューして以来、コンスタントに活躍してきた彼の「ロックのクラシック」作品は愛聴してきたし、独自の音楽性と媚びることやブレることとは一切無縁の存在には多くのロックファンと同様、リスペクトを感じていたので、まだまだ元気で活動してもらえるものと思っていた矢先の他界は残念です。
今さらですが、遺作となってしまった一昨年のアルバム “ LULU ” を購入、最後となってしまった肉声を聴きました。

エドガー・アラン・ポーの詩「大鴉」をテーマとするトータルアルバムで、俳優ウィレム・デフォーのポエトリー・リーディングであるタイトル曲を筆頭に静謐なイメージの曲が多い前作 “The Raven ” (2003) とはうって変わり、メタルロックバンドメタリカ (Metallica) との共演で当たり前ではあるものの、全編ヘヴィーな轟音の洪水である今作。
ドイツの19世紀の戯曲をベースにしたトータルアルバムという構成は文学博士という顔を持つルー・リードの真骨頂といえ、2枚組計87分、全10曲中3曲は10分を超える長尺の、最近めっきり少なくなった気合を入れ緊張感をともなって聴くことの求められる作品です。

確かにルー・リードの作品として聞くと、このヘヴィーさ、タイトさは異質のものです。でもスロー~ミディアムテンポの轟音に乗せてポエトリー・リーディングのような、ドスの効いたルー・リードのボーカルが出てくるとそこはもういつものルー・リードの世界。語尾を少し捻ったところが辛うじて歌メロ、というのも全くいつもの通り。相変わらずクールでかっこいい。
ただ、テンポアップしメタル独特のギター・リフが鳴り始めると、もうそこは紛れもないメタリカの世界。リズムのタイトさが際立ち(ドラムのインパクト大)、緩急の変化もスリリングで、アルバムいちばんの聴きどころがメタリカの熱気あふれるプレイであることは疑う余地のないところです。

 ↓ 2つの強烈な個性が火花を散らす “ ザ・ビュー ”
     (アルバム ” LULU ” より)


レコーディングセッションの間じゅう、既存の方法論を棄て、ありきたりの考えから離れることを要求し続けたルー・リードとそれに応えてこの上ないパワフルなサウンド創り上げたメタリカのメンバーたち。メタリカのメンバー、ラーズ・ウルリッヒによると時に衝突も起こる緊張感あふれるセッションだったようですが、大半の部分をスタジオでの即興で作り上げるという手法に
「既存の殻にこもるなど意味の無いことだ」というルー・リードのメッセージを感じます。

はじめの印象ではサウンドが変わってもルー・リードの世界は変わらない、というのが強かったものの、ラーズ・ウルリッヒの回想談やライナーに紹介されているインタビューを見ながら繰り返し聞くうちに、
『エネルギー』、『重さ』、『大きさ』 (ラーズ・ウルリッヒ談)
つまりはメタリカの持つ圧倒的なサウンドのパワーやタイトネスがルーのインスピレーションに大きく作用しただろうな、と思えてきました。

この作品にはコラボレーションによるケミストリーが間違いなく生まれていると思うし、それゆえルー・リードとメタリカ双方が納得できる仕上がりで、それぞれの音楽に親しんできたリスナーに広く深く、この先長く受け入れられる傑作になっていると思いました。

メタリカのラーズ・ウルリッヒによるアルバムセッションの回想談
(2013年10月31日、ロッキングオンWebサイト洋楽ニュースより)



既存の殻にこもるなど意味の無いこと-

レコーディング当時69歳だったルー・リード。間違いなくその視点は未来を見据え、新たな方向性を模索していたと思われます。

ロック界のクラシックとされ、30~40年に渡ってシーンで活躍を続けながら、今も現役で精力的に制作活動を行っているベテラン・ミュージシャンに共通して言えるのは、自分で築き上げてきたものの上に安住することなく、新たな方法論を常に自ら模索している姿勢だと思います。
こうした姿勢は年齢とは無関係にロック的といえるし、生き様としてかっこいいですね。

生きている間に言ってくれよ、と叱られそうですね。



[” LULU ” ユニバーサル インターナショナル, 定価2,980円]

 ↓ おしまいにルー・リードのクラシックナンバー “ ワイルドサイドを歩け ”
     (1985年のライヴから)

13.09.02

地味さは普遍性の証し ― 奈良県中山間地区の人びとを描く河瀬直美監督 ―

先日、訪問した奈良の先生に一服のお茶をいただき、奈良の茶畑で撮った美しい映像を思い出しました。
カンヌ映画祭でグランプリを獲得した 河瀬直美監督の 『殯の森』(2007年、日本・フランス) の一場面です。

「奈良ってお茶どころなんですってね。きれいな茶畑を映画で観たことがあるんです。」
思わず、そう話しかけたところ、すかさず

「その映画 『殯の森』 でしょう?河瀬監督はお住まいがご近所みたいなんですよ、
あちらは私のことを知らないけれど。ときどきお店なんかで見かけるんです。」

とのお答え。

河瀬監督の名前が先生の口から出るとは正直予想していなく、いささか面食らいました。
しかも地元奈良県といえ、「ときどき見かける」とは…。

奈良県を拠点に子育てしながら独自の作風の映画や小説を発表している河瀬直美監督は、カンヌでは新人賞 (1997年の 『萌の朱雀』) とグランプリの受賞、2013年には審査員として招かれるなど、高く評価され知名度も十分ですが、作品は地味そのものだし、公開は小規模でロードショーなどは一切ありません。

正直なところ、私もカンヌの受賞作という情報に興味があって最初 『萌の朱雀』、次いで 『殯の森』 と観てみたのですが、いくつかのエピソードが交えられてはいても基本的に淡淡と静かに進んでいくため「え、これが?」というのが偽らざる第一印象でした。

そこで、相手の先生もまさかご存じではないだろう、と勝手に決め込んでしまっていたのですが、 映画の撮り方や観方にルールなどないし、撮る目的、観る目的は人それぞれです。

奈良県の中山間部に暮らす普通の人びとの日常に題材を求めながら、
「人が生きること」 「次世代へと命をつなぐこと」
等を普遍的なテーマとして掲げていると、この画面下方のTED x Tokyo での語りや他で語っていることからは推測され、そのことは

「自ら披露しているその生い立ちや幼いころの体験に深く根ざしている」

と考えられるし、日本的な美しい吉野の山河を織り交ぜながら、自然光の下、自然なアングルで、まるで自分の家族がしゃべっているのを近くで聞いているように見える独特の映像(しかも出演者は大半が素人)は、やはり TED x Tokyo での語りにある、

「人が生きた証しを映像に残し、(その人がいなくなった後も)再生できることの素晴らしさ」

を映像で表して見せたものかなと思います。
不思議な感触をもつ河瀬監督の映画を言葉の壁を超え受け止めるフランスの人びとの感性、その懐の深さには改めて感銘したし、河瀬監督自らの発案による 「奈良映画祭」 などを通じて、奈良県民の方にはその存在がきっとお馴染みなんでしょうね。
さすが地元、たいへん失礼しました。


河瀬 直美監督が「映画の価値」について語った Ted x Tokyo でのトーク

『萌の朱雀』 で主役に抜擢された、奈良県五條市の当時の中学3年生 尾野真千子さんは、今や実力を兼ね備えた人気女優です。私も大好きだな。
出演作 『そして父になる』(是枝裕和監督) が2013年のカンヌ映画祭審査員特別賞を受賞しました。

ちなみにお茶は奈良産ではなく、先生の長野県在住のご親戚が無農薬で有機栽培されたものでした。とてもおいしかったです。


「殯の森(もがりのもり)」(2007、日・仏。脚本・監督:河瀬直美。出演:尾野真千子他)


「萌の朱雀(もえのすざく)」(1997、日。脚本・監督:河瀬直美。出演:國村 隼、尾野真千子他)

13.08.13

見た目は無愛想な49歳のおっさんだけど…。― ジョニー・マー『ザ・メッセンジャー』 ―

1980年代半ば、英国インディー・ロック・シーンに勃興した 「ネオアコ(ネオ・アコースティック)・ムーヴメント」 が隆盛を極めました。私が20歳のころです。
アズテック・カメラやフェルトら、今の季節よりもう少し暑さが収まって過ぎゆく夏を惜しむ頃に聞きたい、切なさを感じる好バンドが多数輩出されました。
(古い感傷に浸る話ですみません!)

中でも、モリッシーとジョニー・マーのコンビを中心にネオアコ・ムーヴメントの中心バンドだったのがザ・スミスです。
活動期間は約4年と短いものでしたが、モリッシーの書く文学的で繊細、ときに辛辣な詩とマーの書く切ないメロディー、そして切れのいい軽やかなストロークやリリカルなギター・リフはそれまで聞いたことがないほど鮮烈な個性に溢れ、同世代ということもあって素直に共感できるものでした。

ロックミュージシャンの概念を覆すようなモリッシーという個性派シンガーをバンド結成に際し自宅から連れ出したこともその功績に数えられるギタリスト ジョニー・マー。熱心なファンに加えてミュージシャンにも信奉者の多いマーが5月にザ・スミス解散後25年目にして待望の1st ソロアルバム “ ザ・メッセンジャー ” をリリースしました。

 ↓ ザ・スミスが脳裏によみがえる!新譜 “ ザ・メッセンジャー ” より
   ” New Town Velocity ”


ドラムス以外をすべて自分でプレイし、アレンジ、プロデュース、スタジオ・ワークとすべてを自ら手がけた12曲。
まず際立つのは天賦のメロディーセンス!ザ・スミス時代と変わることない切なく繊細なメロディー、鳥肌立ちます。
一方、ザ・スミスのサウンドに見られた2つの大きな個性(ポリシー)、
「ディジタルメソッドを使用しない」ことと「コーラスワークがまったくない」
ことは時代相応の適度な味付けとして取り入れられ変化が見られますが、あくまでサウンドの根幹はリリカルなギター・リフや軽やかなストロークなど端正なギターの音色です。ファンが待ち望んでいたマーがここにやっと帰って来てくれた、と歓喜する思いでした。

元相棒のモリッシーもこのところ持ち味を遺憾なく発揮した充実作を連発している今、ザ・スミスを旅立った2人の稀代のアーティストが元気な姿で輝いているのを見られることは、多感な時期に彼らのメッセージに触れ、アーティストとして、同世代の若者たちとしてリスペクトしてきた1人として幸せです。
モリッシー作品にマーの影を探すことも、マーの客演と裏方ばかりの活動に「もっと表に出てやってくれないかなあ」ともどかしさを感じることも、この分だともう必要ないのかな。



[” THE MESSENGER ” HOSTESS, 定価2,490円]

13.06.10

フジコから始まる音楽の旅(JOURNEY)

音楽のある生活、っていいものですね♪
私は元々、特別音楽が好き!というわけではなかったのですが、
今年5月は、結果的に「音楽強化月間」となりました。

はじまりはフジコ。
もう何年前になるのでしょう。とあるドキュメンタリー番組で紹介されてから、そのドラマティックな人生とあいまって、一躍人気となったフジコ・ヘミング。
彼女の「ラ・カンパネラ」を、いつか生で聞いてみたいとずっと思っていました。
岡山に来てくれると知り、(フジコの)年齢的なことも考え、ついにその「いつか」を決行することになったのです。


「フジコ ~あるピアニストの軌跡~」[DVD]

「奇跡のカンパネラ」[CD]

200年前のものだというゴージャス&シックなフランス製アンティークドレスで登場したフジコ。
すごく似合っていて素敵でした☆
そして演奏がはじまり・・・・・・。
良かったぁ・・・。(´Д`)ハァ…
正直、ちょっと「あれ?」と思ってしまった部分もあったのですが、
きっとそれらも含めてのフジコなのだと思います。
独特の表情がつけられた彼女の演奏は力強くも温かく、ときに切なく、涙を誘う。(;△;)
楽しみにしていた「ラ・カンパネラ」はもちろんのこと、ショパンもすごく良かったです。
ショパンは昔から好きでCDも持ってはいるのですが、フジコが奏でるショパンでなければ、もう満足できない体になってしまった気がします。

「憂愁のノクターン」[CD]
ノクターンがもっと入ってるといいのに!

そして翌週末は、
大野雄二&ルパンティック・ファイブによる「ルパンティック ジャズ・ナイト」
奇しくも、前週からの「ふじこ」つながり(フジコvs.不二子)でした!

私は純粋に音を楽しみ、「やっぱジャズ、かっけ~!(格好いい)」と心の中でつぶやきつつ堪能していたのですが、ルパンファンの方ならさらに思い入れたっぷりに楽しめたのだろうと思います。

そうそう、メンバーの中に、ボストンのバークリー音楽大学に留学歴ありという人がいて、昨年訪れたボストンのことが思い出されました。
ニューヨークの駅や街角で演奏していた人たちは、いかにもストリートミュージシャンって感じの風貌(偏見?)だったのですが、ボストンで見かけたのは、ちょっとええとこの学生さん風で、有名な音楽大学に通っている若者かしら?なんて思っていたんです。

LUPIN THE THIRD「JAZZ」

続いては、音楽ドキュメンタリー映画を2本鑑賞。

まずは「ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン」
無名のフィリピン人シンガーだったアーネルが、新しいリードボーカルを探していたジャーニー(JOURNEY)のメンバーによってYouTubeで見出され、新ボーカルとして迎えられる!
ネット時代ならではのサクセス・ストーリーです。

人は生まれながらにして平等ではないし、努力が報われるとも限らない。
でもだからこそ、ごくごくまれに、諦めなければ夢をつかめることもある、そんなおとぎ話に激しく胸が躍るのです。o(^o^)o ワクワク

「ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン」 [DVD]

「ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン」 [Blu-ray]

小柄で童顔、「いかにもアジアン」な彼が、40歳にしてつかんだアメリカン・ドリーム。
「Don’t Stop Believin’」の歌詞は、彼の人生にリンクする。

だけどこの映画は、ただのサクセスストーリーに留まらない。
メンバーが語る「成功に伴う代償」の話は興味深く、ジャーニー(JOURNEY)というバンドが抱えていた問題、それゆえの葛藤やプレッシャーなどもリアルに感じることができました。
そして何より、アーネルの伸びやかな歌声は心地よく、小さな体でステージを飛び跳ね、キラキラした瞳で走り回る姿に魅了される。
そしてサラリと語る過去の断片、謙虚で真摯な姿勢に胸を打たれる。o(iДi)o
彼を見つめるおじさまメンバーが、すごくうれしそうで、優しい目をしていたのも印象的。

「LIVE IN MANILA」 (BLU-RAY) (2010)

「Live in Manila」 [DVD] [Import] (2009)

彼らの旅(JOURNEY)はまだまだ続く。
苦労に苦労を重ねてきたからこそ、完璧な幸せなどない、人生にはトラブルがつきものだということを、アーネルはよく分かっている。
彼がやっと掴んだ幸せが、どうか少しでも長く続きますように、彼の周囲が少しでも平穏でありますように、数多の誘惑にも負けることがありませんようにと、願わずにはいられない。

オールドファンのみならず、私のように「glee」からジャーニーに入りました、というような人でも、十分に熱くなれる映画だと思います♪

「glee/グリー 踊る♪合唱部!?」 vol.1 [DVD]

Glee: the Music-Journey to Regionals Ep [EP, Import]

「グリー 踊る♪合唱部!?」<シーズン1>Volume 1 [Soundtrack]

そしてもう1作は「シュガーマン」
こちらも永い不遇の末に起きた奇跡のお話。

「シュガーマン 奇跡に愛された男」 [DVD]


「シュガーマン 奇跡に愛された男」 [Blu-ray]

印象に残っているシーンの中に、「シュガーマン」ことロドリゲスが、土木作業の仕事に行く際も、スーツ姿で格好良く出勤していたというエピソードがありました。
それは決して「格好ばかり気にして」とかそういう話ではなく、姿勢の問題なのです。

そして思い出したのが、昔ドキュメンタリー番組で見た、あるホームレス男性のこと。
小奇麗なシャツを着て、丁寧に入れたお茶を飲みながら折り畳みチェアに座って本を読むその姿は、普通の、というかむしろ、休暇にアウトドアを楽しむ上品な紳士といった風情でした。野宿生活であっても毎日きちんと身なりを整え、意識して規律ある生活を心がけていると言っていました。

昔東京で出会った「ビッグイシュー(※)」販売員さんにもそんな人がいました。
それ以前に大阪で見かけた販売員さんは、ちょっと近寄りづらい雰囲気で、気弱な私は声を掛けることができなかったのですが、東京で出会ったその人は、身奇麗でとても感じがよく、何でこの人が?と思ってしまうような人でした。もっと近ければ定期購読者になって応援するのにと、残念に思う反面、きっとこの人なら大丈夫だろう(這い上がれるだろう)とも思いました。

易きに流されがちなのが人間です。
もしも縛りがなくなれば、私なんてどんどん自堕落番長になってしまいそうで怖いです。
どんな状況にあっても、その場でできることに身を尽くし、自分を律することができる人って、すごく尊敬します。

※「ビッグイシュー」:ホームレスの自立を支援する雑誌。
  ホームレス自身が路上販売し、1冊300円の内160円が販売者の収入となる。

『ビッグイシューと陽気なホームレスの復活戦―THE BIG ISSUE JAPAN』

『ビッグイシューの挑戦』

そして、どんなに周りの状況が変わっても、ブレない男、ロドリゲス氏は、招待されたアカデミー賞受賞式への出席も、(土木の)仕事があるからと断ったのだそうです。カコ(・∀・)イイ!!

映画の中で、印税のことだけがどうしてもモヤモヤと気になっていたのですが、このサントラの売上は、ちゃんとロドリゲスさんに渡るそうです。みんな、ポチってあげて!

「シュガーマン 奇跡に愛された男」オリジナル・サウンドトラック

13.02.22

 ネロが焦がれたルーベンス + 「怖い絵」

今日も仕事が終わらない。
パトラッシュ、僕はもう疲れたよ・・・。


『フランダースの犬 』

完結版『フランダースの犬 』DVD

あの時のネロと同じような気持ち(?)で、私も今、ルーベンスの絵を眺めています。
デスクに置いた卓上カレンダー。「大エルミタージュ美術館展」で昨年購入したものですが、2月を飾っているのが、ちょうどルーベンスの絵だったのです。
(ネロが見たのとは別の絵ですが)

前ブログで書いた名古屋遠征。実はミュージカル観劇の他に、この展覧会(in名古屋市美術館)訪問も目的の一つでした。

訪れたのは、『怖い絵』シリーズなどでお馴染み、中野京子氏の記念講演開催日。
到着した開演1時間前には既に満席。さすが中野先生、大人気です!
私は立ち見で参加しました。


『怖い絵 泣く女篇』文庫

「絵を見るのに理屈なんていらない。ただ感じればいいんだ。」という人がいます。
確かにそういう絵もあるのでしょう。でも、絵を描くことに意味があった時代、その時代特有の風俗や背景を知らなければ、感じるものも感じられない。
そんなことを教えてくれたのが中野氏でした。


「たとえばドガの踊り子の絵。当時のパリの常識では現代と全く異なりバレエはオペラの添え物でしかなく、バレリーナは下層階級出身の、娼婦と変わりない存在でした。それを知っているといないのとでは、ドガの作品が与える印象は180度といっていいほど違ってくるのではないでしょうか。」

                            (中野京子著『「怖い絵」で人間を読む』より)

絵画を「読み解く」ということ。
私のように絵心皆無な人間にとって、ただ「感じろ」というのは存外にハードルが高いもの。
だけど時代背景や人物の関係性などの予備知識を持って、そこに込められただろう想い、繰り広げられたかもしれないドラマを妄想しながら眺めることを始めると、それが俄然面白くなってくるのですo(*^^*)o。


『「怖い絵」で人間を読む』
お話は面白く、サインもいただき、満足しました

「歴史は勝者が作るもの。」
「見方を変えれば、物事はまったく違ったふうに見えてくる。」

講演会での中野氏の言葉はウィキッドにつながり、また以前聴いた吉村作治氏講演会でのお話も思い出されました。

「海の魚たちを描いた壁画(とか道具)があったとする。それを見た人はまず、昔この辺りは海に近かったのだと思うだろう。でも実際にはその時代、そこは海からかなり離れていたことが分かったりする。遠いからこそ、めったにお目にかかれないからこそ、いつか見た(聞いた)海や魚に憧れる。身近にあるものでなく、憧れや渇望を描き残すということもある。」
その話を聞いた時、「目から鱗」がボロボロとこぼれ落ちたような気がしました。
魚だけに・・・・・・(^^;) 。


『ルーベンス ネロが最後に見た天使』

ネロも焦がれたルーベンス。
カレンダー掲載作品の他、展示の中にあったのが「ローマの慈愛」。
これがなかなかの衝撃作でした(゚д゚)。
「これぞ究極の慈悲!親子の絆!」と感動する人もいるのでしょうが、人間が未熟だからか、母性が欠けているせいか、私は生理的にちょっと・・・と思ってしまいました。
ネロ、ごめん。

とはいえ、巨匠といわれる画家たちでも、ゴッホをはじめ生前ほとんど評価されていなかったという人は多く、逆に現役時代は人気があっても、それが後世まで続くという人もまた、まれだといいます。
生前から名声を博し、現在に至るまで高い人気を保ち続けているルーベンスが、とても稀有な存在であることは間違いありません。

ルーベンスの他にもレンブラントやモネ、セザンヌ、ピカソ、マティスなど、時代・ジャンル共に幅広い作品が展示されていました。
レンブラントがよかったなぁ。

公式MOOK

『ロマノフ王朝の至宝』

12.10.22

 いいプレイをする奴なら、
     肌が緑色の奴でも雇うぜ

またまたお久しぶりです。
終わらない繁忙期、・・・。追われ続ける日々・・・。
いつか・・・、落ち着ける日は来るのでしょうか。
というわけで、気分転換に久しぶりのブログ投稿です。

9月の始め、名古屋に行ってきました。
メイン目的は、ミュージカル「ウィキッド」を見ること。
実は本場ブロードウェイでミュージカルを見る!という野望があり、そのための予習だったのですが、数ある作品の中で、なぜ「ウィキッド」なのかといいますと・・・、
アメリカンドラマによく出てくるから
「アグリー・ベティ」しかり、「glee」しかりです。

アメリカでは、ミュージカルなどのショービジネスが生活に浸透しているのだろうなと思うと共に、そこに登場する作品を知れば、きっとドラマもさらに深く味わえるだろうと思ったのです。

「アグリー・ベティ シーズン1」コンパクトBOX [DVD]

観劇したのは千秋楽の前日。
千秋楽1週間前からカーテンコールがスペシャルバージョンになるということもあってか、常連さんと思しき人の姿が多く、初心者の私は少々緊張しておりました。
ですが、結果、すごく、すごく良かったです!!!
ありきたりすぎる台詞は使いたくないけど、でもまさに
「感動をありがとう!」って感じでした。
一幕終わりの曲「自由を求めて」(原題は「Defying Gravity」)は特に素晴らしく、心が震えました。感涙。・゜゜・o(iДi)o・゜゜・。
休憩時間に入ってからもしばらく動けず、ぼーっと余韻に浸っておりました。

「glee」で、レイチェルとカートが歌姫対決した時の曲がこの「Defying Gravity」。
あのエピもよかった☆

「glee/グリー」DVDコレクターズBOX

グリー 踊る♪合唱部!?<シーズン1>Volume 1 [Soundtrack]
   

「ウィキッド」は『オズの魔法使い』のプロローグというかアナザーストーリー。
少女ドロシーが出会った二人の魔女(西の悪い魔女エルファバと南の良い魔女グリンダ)が主人公。
緑色の肌と魔法の力を持って生まれ、自由と正義を求めたはずの少女エルファバが、なぜ邪悪な魔女と呼ばれるようになったのかを描いた物語です。

『オズの魔法使い』

「オズの魔法使」特別版 [DVD]

   

児童文学がモチーフとはいえ、これが侮れません。
正義とは何か。多数派=善なのか。そんなことを問いかけられる。
幅広い世代で根強い人気を誇っているのが分かる気がしました。

権力を守るためにわざと「共通の敵」を作るという、今もよくある政治手法。
「歴史は勝者が作るもの。それが真実かどうかは分からない」
数時間前に聞いた中野京子先生の言葉がよみがえりました。

世間一般では「多くの人が信じたもの」が正しく、真実であるとされる。
とりわけ日本人は「みんな」という言葉に弱く、「みんな」の決めた事柄には、常に絶対的権威と正当性が与えられてきた。
数ヶ月前に刊行されたこの本の中にも、そんな「みんなの力」の強さと危険性、「〈みんなで決めたことだから正しい〉という判断基準について」書かれている部分がありました。
とても読みやすくて面白いと思います

権力の社会学

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「みんな、頭からっぽだから、何だって信じるんだ」フィエロの言葉。
皆が考えることをやめた時、与えられるものをただ享受し、疑問を持つことをやめた時・・・。
そんな映画もありました。

これも結構おもしろかったです。

『26世紀青年』DVD

大満足だった「ウィキッド」初観劇。
ブロードウェーへの期待もますます膨らみましたo(*^▽^*)o~♪


ミュージカル「ウィキッド」劇団四季版