▼2013 年 6 月 17 日 のアーカイブ

13.06.17

ブリキの太鼓 ―せっかくなのでディレクターズ版も…観たいなあ―

1979年、私がまだ高校生の頃に名作の呼び声高く、カンヌ映画祭のグランプリ「パルム・ドール」とアカデミー外国語映画賞をダブル受賞した映画

        「ブリキの太鼓」

は、第二次大戦前夜、ドイツ、ポーランド国境近くに存在した自由都市ダンツィヒ(現在はグダニスク)を舞台にしたドイツ人のノーベル賞作家 ギュンター・グラスの小説(主人公の設定は作者本人かな?)の映画化です。

ディレクターズカット版のBlu-rayディスク発売(2012年11月)を祝し、でもオリジナル版ノーマルDVDで、今さらながら鑑賞しました。なんでオリジナルやねん…。

独立都市国家という特異性とそのロケーションからナチスによる侵攻の最初の標的となり、ナチス・ドイツとポーランドとの激しい綱引きに晒されたダンツィヒ。
ドイツ人、ポーランド人、そしてカシューヴ人とそれぞれに立場が異なり、それゆえ運命が大きく左右されてしまう家族の人びと。

第二次大戦前夜から終戦後にソ連軍が進軍してくるまで、という、どう料理しても暗くならないわけのない舞台設定であり、ストーリーですが、主人公オスカル少年の “超能力” のためか、どことなく寓話的というか幻想的で、観終えた後不思議な余韻を引く映画でした。

ただ、時代背景を象徴するのか、あるいは人間の内面を表現したのか、原作に忠実ということのようですが、かなりダークでおどろおどろしい描写もあり、確かに「名作」ですがその点は好き嫌いが分かれそうです。

原作を読んだわけではないので分かりませんが、自らドイツ人の父とカシューヴ人の母を持つ作者 グラスはドイツ人として史実を冷めた視点から伝承し、その時代の空気やそれぞれの立場でダンツィヒに生きた人人の心持を代弁する役割を自ら担ったのかな、と思いました。

ところで、ドイツ人でもポーランド人でもなく、帰属する土地が無いからと、少数民族 カシューヴ人という自らの出自を嘆く祖母のシーンも印象深く観たその日(6月16日)の夜、安部首相の東欧訪問、ポーランド共和国のドナルド・トゥスク首相との会談、そして共同声明の模様がニュースで流れました。
トゥスク首相はカシューヴ人とのことです。
タイミングの良さもあり、過去の背景などまったくの無知だった私ですがこれにはちょっと感動を覚えました。
かつての自由都市ダンツィヒは、今ポーランド最大の港湾を抱く都市グダニスクとなっています。



[1979、西独・ポーランド・フランス・ユーゴスラビア合作、フォルカー・シュレンドルフ監督]

※ オリジナルから31年、20分に及ぶ未公開シーンを収録しています。