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08.12.11

自分の体で実験したい!

早いもので、今年も残り20日ほどとなり、何かと気忙しい師走でございます。
食の不安に世界的な金融恐慌、暗い話題が続いた2008年ですが、物理学賞と化学賞、日本人のダブル受賞にわいた今回のノーベル賞ニュースは、ひときわ明るいものでうれしいですね(*゚-゚)

 
昨日行われた授賞式では、王立科学アカデミーの代表者による賛辞が日本語で述べられていました。日本語講演にこだわった益川教授に配慮されたものでしょうが、何とも粋な計らいですよね。別に自分が何かをしたわけでもないのに、日本人であるだけで何だか晴れがましい気分になれるニュースってそうそうないと思います。実に素晴らしい!

 

素粒子物理学がどんなものかは分からなくても、一つの事柄に対し、何年でもどこまででも追求し続ける科学者ってすごい!と思う私のような人にお薦めなのが、本日ご紹介する本。
『自分の体で実験したい-命がけの科学者列伝-』

 

科学の進歩には、実験が必要不可欠です。医学の研究では動物実験も多い。しかしながらやはり、人間を使わなければ意味のない実験もある。
その実験を、自分自身の体で試してきた科学者たちの記録。勇気ある人体実験の記録です。

 

1770年代の体温計は、おもちゃのような代物にすぎなかった。
人間の体温が通常36.7度前後ということは知られていても、なぜその温度になるのかわからない。
人間はどれだけの熱に耐えられるのか、人体と熱の関係を解明しようとした男がいる。

 

手始めに蒸気の立ちこめる部屋にこもり、32度、43度と徐々に温度を上げていく。ついに49度。心拍数は1分間に145回!
それでも体温は37.8度を超えることは無かった。

 

さらに実験は加熱していく。
四人の紳士が仲間に加わり、65度と72度、さらには92度の部屋で10分過ごした。金属でできたものはどれも熱くなりすぎ触れることができない。
体に力が入らず、手が震える。めまいに襲われながら、やっとの思いで体温を測ると36.7度!平熱のままである。
自分の体を触ってみると「横腹が死体のように冷たかった」という記述を残している。

 

それでも好奇心はおさまらない。さらに4人の紳士を加え、室温127度にまで挑戦だ。温度計が狂っていないか確かめるため、生肉と生卵を置いてみる。20分で卵は固ゆで、30分ほどで生肉がウェルダン状態のステーキに。
それでも体温は37度を超えることがない!

 

なぜ体温は変化しないのか。秘密の一つは汗にある。

彼らのあぶり焼き実験のおかげで、医者は病人の体温の変化に気を配るようになり、体温計を使って体調管理ができるようになったのです。ありがとうございます!

 

他にも消化のしくみを知るために袋や木の筒ごと食べ物を飲み込んだ男、病気に感染したメスを両腕に刺して記録をとった男など、彼らの実験とその陰にあった物語、後の社会に与えた影響などが紹介されており、その勇気と情熱にはただただ圧倒される。
何が彼らを、時には死をも賭す実験に駆り立てたのか。
世のため人のためという崇高な意志もあったでしょう。ですが一番には、純粋に科学者としての好奇心と探求心、抑えきれない知的欲求というものだったのではないかと思います。

 

でも、それはちょっと分かる気がします。なんて言うのはおこがましいですよね。まったくレベルは違いますが、いまだ「見たい!知りたい!感じたい(感動したい)!」という気持ちマンマンなお年頃ではございます(*・・*) すみません。

08.11.27

2000年前からインターネットがあった!?

もしも、2000年も前からインターネットがあったとしたらどうでしょう?
ネット検索などしていると、削除されたはずの古いページ(キャッシュ)がひょっこり出てくるということはよくあり、WEBには、そういった古い情報の痕跡があちこちに残されています。

 

歴史Web修復委員会では、すでに削除された歴史的ページの痕跡を長年探索し続け、この度ついに、2000年前から蓄積されてきた膨大な量のキャッシュを発掘したのである!
そしてそれを修復、現代語へ翻訳したものの一部をここに紹介する。

 

・・・という設定で作られたのが、本日ご紹介する本『歴史Web』。
いやぁ~、これがめっちゃくちゃ面白かった!

 

弥生時代から幕末まで、歴史上の様々な事件をホームページにしており、有名人のブログから掲示板、まとめサイト、Not Foundのページなど、ネットでよく見かけるサービスをうま~く歴史にあてはめていて、とにかく面白い!面白すぎてどこをピックアップすればいいのか、もう分かりません。
邪馬台国公式本家頁から始まり、時系列で様々なページが紹介されています。
竪穴式住居に住む主婦のブログは「ドキ♥ドキ♥私の土器これくしょん」だし、前方後円墳を建設する業者のホームページもある。よくある質問として「工期はどれくらい?」の他に「昔ながらに、生きている奴隷を埋めたいんだけど?」なんてものまであり、それをやめるために埴輪が作られた(という説もある)という歴史背景にも思いをはせることができます。

 

「弐ちゃんねる」なる掲示板はかなり古い時代からあった様子。

 

大化の改新キターーーーーーー(°∀°)ーーーーーーーーー !!!!!!

 

などと盛り上がっております(≧▽≦)

 

奈良時代には天尊(あまぞん)なるおんらいん書店が登場。といっても当時の本といえば『古事記』と『日本書紀』くらい。『聞き書き古事記(上)』、『よい子の古事記』、『もう一つの古事記』など様々な古事記が今月の売れ筋順位一位から五位までを独占中です(爆)
『古事記(愛蔵版)』の「読者評価」。
「てゆーかー、結局は皇室の自慢話なわけでしょー。こんなもんで国家統一しようとしても別に、って感じ。漢文体ばっかじゃなくて万葉がな入ってるのは良かったけどね、しゃべり言葉に近くて。今度出る日本書紀は似た内容で三十巻でしょー。長すぎ。」
何かすごくありそう、というか言いそーって感じですよね。

史実には忠実に寄り添いながら、ネット用語というか、ネットでの表現はすごくリアルでネーミングセンスも抜群!うまいよなーと思います。

 
平安時代に入ると、清少納言はブログで枕草子(枕のぶろぐ)を書き、紫式部もブログで源氏物語を連載しているようです。「この世をばわが世とぞ思ふ」藤原氏と「平家にあらざる者は人に非ず」の平家が運営しているのはもちろん、一族一門だけの会員制サイトです。

 
ちょいちょい出てくる掲示板も本当によくできていて面白い。スレタイトルだけ見ても、ちゃんと時代を感じることができます。「中大兄皇子って性格悪いんじゃね?スレ」、「所有地を返せ!豪族の怒りぶつけようスレ」、「最澄と空海が喧嘩している件について。」、「清少納言っていろんな意味でどうよ?」、「源平どっちが好き?腐女子筋連(すれ)」などなど。
リアルタイム更新のニュース板『桶狭間で、なんかあったらしい』では「管理人の判断で荒らし中傷と判断した投稿は即、奇襲いたし申す。」という注意書きがあるのにも笑った。

 
また、重大事件については複数ページからその成り行きを伺い知ることができます。明智光秀の「十兵衛日記」が、本能寺の変当日に「接続が集中し、大変つながりにくい状態」となり、その十一日後には「管理者により削除」される。その一方で「秀吉のさるさる日記」では「殿の敵を討ちとったり!」という記事がみられる、という具合。

 
江戸時代初期、武士・浪人のアルバイト情報サイトに豊臣方、徳川方双方の仕事情報が載っているのも興味深い。豊臣方が募集するのは、籠城して徳川軍と戦う「いくさのお仕事」。「関ヶ原経験者優遇」とあり、「こんな人が一緒に働いています!」として真田幸村らの名前があげられています。一方の徳川方は、大阪城の濠を埋める「急募!ガテン系のお仕事です!【未経験者歓迎】」とある。「難攻不落といわれた名城の城攻めに参加して、あなたも歴史を作ってみませんか?」っていうコピーもすごく上手い!ありそうですよねぇ。

 
ある藩主の長男が書くブログ「ぼくの参勤交代論」もいい。

「父上がいなかったときのほうがぜんぜんきらくで良かった。父上なんかいなくていい。また一年後が待ちどおしい。」という記事に対しコメントが続く。

「ぼくも思うよ、おやじがいないほうが気楽・・・」「わたしはやっぱり家族はいっしょがいいな・・・」「参勤交代になってから、うち小遣いへった」「ごはんのおかずがひとつへった・・・」「かいわがへった・・・」

切ない。。。何だか現代の単身赴任家族とだぶって見えました。
五代将軍綱吉のブログは、皆様予想通りだと思います。

「うちのワンコは日本一!」
やっぱり。。。

 

高校時代の日本史は、とりあえず暗記するしかなくて、面白いものではありませんでした。
ですが歴史上の様々な出来事も、ネット住人目線で描くことにより、実にいきいきと鮮やかに浮かび上がり、とても身近に感じることができました。
とりあえずざざっとならば2時間くらいで読み終えると思いますが、例えばバナーや外部リンク、コメントを入れているのは誰かなど、細部にいたるまで小ネタが満載で、何度でも読み返したくなるのがこの本。面白いだけでなく、すごくよくできている。「構想2分制作2年」というのも頷けます。ちなみに、邪馬台国や幕府のオフィシャルサイトは地方自治体のサイトをイメージし、わざとダサめに作られたのだそうです(^▽^;)

 

「歴史」は、歴史上の人物が作ったのではない。権力が欲しかったり、金儲けをしたかったり、自己表現をしたり、グチったり、他人をねたんだり・・・・・・という、私たちと同じ人間の営みの蓄積が、結果として「歴史」になるのだ。まさに、二千年にわたる、人々の思いを記録した貴重な記録。当時の人々の息づかいを、感じて欲しい。 (「まえがき」より)

 

 

 
表紙のノートパソコンに向かっている人は源頼朝だと学校で習いましたが、近年これは頼朝ではないという説が有力となっているようです。
でもでも、すごく面白いのでお薦めです。買いです!

08.11.26

ミルキィウェイ

本屋さんに行くと、沢山の本が並んでいます。その中でもなにか気になる本ってありますよね。

カバーを見ただけで「あっいいな」ってつい手にとってしまうような…

そうして手にとってみると、大体おなじデザイナーが装丁してたり…

「やっぱりこの人か」ってことがしょっちゅうあります。

そんな気になるデザイナーのうちの一人が、今回紹介する本の著者ミルキィ・イソベさんです。

ミルキィさんの造る本は独特の雰囲気がありますね。

僕が最初にミルキィ・イソベという名前を知ったのは、確かブックデザインを集めた本の中だったと思います。

彼女の名前と、その「日本人離れした」デザインが印象的で、「ハーフなんだろうか・・・」なんて思ってました。

それっきりあまり詳しいことはわからないままだったのですが、このたびこの本

を読んで、あーこの人はこんなに「本」が好きなんだって思いましたね。

だから魅力的な本が造れるんだって。

この「ブックデザイン ミルキィ流」を読むと、ミルキィさんがどれだけ本に愛情を注いで細やかにデザインしているかが伝わってきます。

決してパソコンの中で完結しない「物」としてのデザイン。

印刷や紙、造本、特殊加工などの知識と経験に裏付けられている。

こんな本があるかぎり、「本」はなくならないな。

物として欲しいもの。

僕もカバーをデザインしたり、本文のレイアウトをさせてもらってますが、なんかミルキィさんに背中をたたかれたような気がしますね。

「もっと本を好きになって、もっといろいろ勉強して、一生懸命におやりなさい」と。

08.11.20

バナナと日本人

一時期、スーパーの店頭から姿を消していたバナナですが、もうすっかり元通りになっていますね。皆さん、成果のほどはいかがだったのでしょう??

 
バナナダイエットには参戦しなかった私ですが、バナナと聞くと思い出す本があります。
『バナナと日本人』学生時代、初めてのレポート提出の課題図書がこの本でした。
今でも一房100円~200円ほどで店頭に並ぶバナナですが、そんな安価で安定供給が続けられているのはなぜか、その生産の大部分を担うフィリピンでは何が起きているのか。農園労働者の過酷な生活や利益を追求し暗躍する多国籍企業の実状など。バナナを通して、明治以来続く日本と東南アジアとの関係も綴られています。

 
そしてこの本がすごいのは、初版が1982年、実に四半世紀前であるにもかかわらず、増刷を重ね、今でも現役本として読み継がれているということです。刊行後10年も経たないうちに、多くの本が残念ながら実質「絶版」となってしまう中、これは本当にすごいことだと思います。まさに「古典的名著」といえるのかもしれません。
Amazonレビューを見ると他にも「大学に入学して初めてのレポートの課題図書であった」と書かれている人がいましたので「大学入りたての学生に読ませるのにちょうどいい本」という認識が全国的にされていたということでしょうか。確かに内容的にも文章的にも難解さはなく、読みやすい新書です。

 

 

エビ版もあります。『エビと日本人』

 

 

昨年出たエビ続編です。『エビと日本人2』

08.11.17

私の頭の中のバランス

ここ2年ばかり、図書館でよく本を借りている。2週間に一度7~10冊ぐらい借りるのだが、その内訳を見れば、私の頭の中身がまるわかりである。2年前ぐらいは、8割がデザイン関係。残り1割が写真。そしてもう1割がパソコンソフトの解説書だった。

1年前ぐらいになると、デザインは2割に落ち込み、写真が8割になった。

そして先日。ついにあるものが私の頭の100%を占めるにいたった。図書館で借りた本すべてが同じジャンルになったのだ。

それがテニスである。

実は私がテニスに最初に触れたのは、20年も前のことになる。当時もどっぷりとはまっていたのだが、最近では一寸距離を置いていた。ところが自分の息子がテニスを始め、その試合を見るようになると、むくむくとテニスの虫がさわぎだしたのである。

そして、奇しくもあのクルム伊達が復活したその日。私もテニスのコーチに電話を掛けていた…。

そうなると、はまっていくのは早かった。最初は安いラケットでいいやと思って軽くて使いやすいラケットを買ったのだが、すぐに物足りなくなり新しいラケットを買ってしまった。テニスの雑誌をむさぼり読み、テニスのビデオを何度も見返し、部屋の中で素振りを繰り返す。。。病気である。

毎日練習できればいいのだが、そんなに時間は取れないし、体もついていかない。以前エッセイストの玉村豊男さんが言っていた「テニスを習うのは英会話を習うのに似ている」「子供は体で覚えられるが、大人は文法から覚えなくてはならない」(すいませんうろ覚えです)これはまったくその通りであって、私に毎日6時間練習しろ!といっても無理である。

そんなわけで、文法を学ぼうと、本を探すのであるが、これがなかなかいいものがない。私がいま自信をもっておススメできるテニス本は2冊だけである。今回はそのうちの一冊

書名にもあるが、書いてあるのはサービスのことだけ!なのだが、これは素晴らしい本である。20年間身につかなかったサービスが、少しわかったのである!!私はもう図書館で2回も借りました。えっそんなに褒めるのならお金を出して買えって?

そうですね、これを機に購入することにします。

はいクリックっと。

08.11.16

近作紹介ほか

今週もまた出張の続いた週になりました。
神戸や鳥取に,連日の好天に恵まれて秋色を愛でながら走ること1000キロ。
付き合い始めてずいぶん経つ鈍い腰の痛みを呼び覚ますにはもってこいの日程でした。

さて,今日はまじめに当社の新刊についてご紹介します。題名は,
『語りかける看護場面−看護るもののまなざしを考える−』
といい,去る10月下旬に発行いたしました。

執筆しているのは,島根県出雲市の島根県立大学短期大学部の看護の先生と,その先生が主催する研究会のメンバーの皆さんです。

メンバーの中心は医療機関などに勤める現職看護師の皆さんです。
それぞれが毎月一度,日々の看護・介護の現場から事例を持ち寄り,互いに考え意見を交わすことで,より質の高い看護へと結び付けていくことを目的に研究会を開いています(患者さん個人に関することの守秘は厳守した上で)。
その中から,ひとり一題ずつ,提出した事例について研究会での議論やそれがどう役立ったかを交えてつづっています。

認知症・精神科・終末期などそれぞれのシチュエーションごとに,プロとしてどういうスタンスで接し,コミュニケーションを交わすか,真剣に議論された跡,試行錯誤や葛藤の跡が包み隠さず紹介されています。
看護という職業の「重さ」のようなものを感じずにおけません。

同じ看護の世界にあられる方,また看護の道を志す学生の皆さん,在宅で看護や介護をされている方などに広く読んでいただき,患者さんという一人ひとり異なるひとりの「人」に接することとは…を汲み取ってもらえたらありがたいです。
ご注文はネットショップ,最寄りの書店,または当社にどうぞ。

『語りかける看護場面−看護るもののまなざしを考える−』
A5判,184頁,定価(本体2,000円+税)
ISBN978-4-86186-361-5

以上,当社の近作のご案内です。

こちらはフィクションですが,ファンであり尊敬もしている私と同年代の作家 重松 清氏の短編集『その日の前に』は,不幸にして患者となり,生きながら終末期を過ごさなくてはならなくなった人と,その人に寄り添う家族・友人らの姿がつづられた短編集です。

家族として互いに思いを寄せ合い,ひたむきに生きる主人公らの姿,また,たとえハッピーエンドでなくても,「現実から目をそらさず,前を向いていこう」というメッセージが文章の端々から感じられて,深い感動を与えてくれます。
終末期病棟の看護師についても,紙面は少しですが深い洞察がなされています。
大林宣彦監督の手になる映画も,もうすぐ公開されるんですよね。

岡山県出身でもある重松さんが書く小説は,現代の人間社会,とりわけ家族をめぐるさまざまな問題が取り上げられ,いつ自分の身に降りかからないと限らないリアリティを持っていて,とても読み応えがあります。
舞台が岡山県内に実在する,またはモチーフになっていると思しき町であることがしばしばで,どこをイメージして書いたのか想像するのも,恒例の楽しみとなっています(岡山県人ならでは)。

08.11.13

女子も理容室へ行こう!

最近、理容室に行く女性が増えているそうです。その目的は、美容院にはない理容室だけの特権「顔そり」。ん~、確かに気持ちよさそうですよね。

理容室=男性が行くところ、というイメージがありますが、女性が入りやすいようサロン風の雰囲気にしたり、個室ブースを設けたり、はてはネイルやマッサージなどエステメニューを始めているところもあるようです。
近所にそんなお洒落理容室ができたら、是非是非行ってみたいと思います♪

 

本日ご紹介するのは、ある理容室を訪れたことから、人生が思わぬ方向に変わっていったという人々の悲喜こもごもを描いたオムニバス小説です。

 

気が弱く、言いたいことも言えず、人に舐められ、そんな自分が嫌で自己嫌悪。
短大総務課で働く須川沙紀は、ある日、気分転換に髪を切ることにした。普段は行かない、美容院ではなく理容店。女性店主との気持ちの良いおしゃべり、マッサージをしてもらううちにうとうとした。目を覚ました時、鏡の中の自分は、凶暴性を放つ威圧的な眉になっていた。
眉に引っ張られるように、沙紀は強気な行動をとれるようになり…。
                                        「眉の巻」

男は記憶を失っていた。
なぜか警察や病院には行かない方がよいと思え、記憶喪失のまま仕事を捜すことにした。

面接前、散髪くらいはしておこうと入った理容店で、マッサージされながらうとうとし、目を覚ましたら、側頭部が縞模様に刈られていた。
これではまともな会社に就職することはできない。髪に引きずられるように、男はブラックジャーナリズムの会社に入った。
そして記憶が戻ったとき、男は…。
                                       「黒の巻」

小学五年生のちひろは、春休みを祖父母の家で過ごすことになった。

パッチワークだフラダンスだと毎日いそがしい祖母に引き換え、会社人間だった祖父は、退職後の日々を無為に過ごしていた。孫を退屈させまいと動物園に行けば休園、退職した会社を訪ねてみても歓迎されず、やることなすこと空回り。
散髪をする祖父につきあい初めての理容店に入った。ちひろはマンガに熱中し、気が付くと、鏡の中の祖父は高校球児のような丸坊主になっていた。
不本意な丸坊主。憤慨する祖父に、ちひろはあるプレゼントをした。そして・・・。
                                         「花の巻」

 

初めて入った理容店。
ついうとうとしている間に、髪形(または眉)がすごいことに!
髪形が変わることによって、服装が変わり、性格が変わって、人生までもが変わってしまうというお話。最初はみんな戸惑うものの、結局はなりたい自分、気づかなかった本来の自分になれているような気がします。この店主には人の心の奥底を見抜く力があるに違いない!
そんな陰の主役ともいえる女性店主ですが「以前一緒にやっていた夫と離婚したときにこの店をぶんどってやった」という話を毎回しているのがちょっとおもしろかったです。
個人的に一番気に入ったのは「花の巻」。今の60歳過ぎなんてまだまだ若いし元気な人も多い。家に引っ込んでいるだけなんてもったいない!

『わらの人』六編収録


 

映画化もされていたようです。「髪がかり」DVDもうすぐ発売。

 

女店主のイメージは夏木マリではないんだけどなぁ。。。

08.11.06

CHANGE!(キムタクじゃないよ)

オバマさん、決まりましたね!まずはおめでとうございます(*゚▽゚)_

「私は言いたい。リベラルのアメリカも、保守のアメリカもない。あるのはアメリカ合衆国だ。黒人、白人のアメリカも、ヒスパニック系、アジア系のアメリカもない。あるのはひとつのアメリカだ」(4NHK放送「オバマ対マケイン(前編)」より)

キング牧師がI have a dream.という名演説を残してから45年。感慨深いものがありますね。

     キング牧師について知りたい方はこちらをどうぞ。来週12日にタイムリーな番組が放送されます。

http://www.nhk.or.jp/sonotoki/main.html

 

いわゆる「ロス疑惑」での三浦元社長逮捕時に、未解決殺人事件を捜査する「コールドケース」というアメリカンドラマが注目されましたが、そのドラマでもしばしば人種差別が事件の背景として描かれていました。黒人と白人が同じ店に入ることはなく、かなり古い時代だと、話をしたり目を合わせることすら許されない。白人至上主義者は黒人を暴圧するだけでなく、有色人種差別をしない優しい(まっとうな)人とも激しく対立する。「そういう時代だったのよ」事件を捜査する殺人課メンバーが、やりきれない思いで何度も口にする言葉です。

このドラマには他にも、同性愛者や共産主義者に対する弾圧、イラク戦争や近年アメリカで実際に起こった事件をモチーフにしたエピソードもあり、なかなか考えさせられることの多い、重厚かつ非常に面白いドラマなのです。ただ、残念ながらDVDは発売されていないんですよねぇ。回想シーンなどで事件が起こった当時のヒット曲を使用し、その時代の雰囲気を醸し出すという演出が人気の一因となっているのですが、そのことが著作権問題を複雑にし、DVD化は難しくなっているといわれています。

 

オバマ新政権で、日米関係についてはどんなChangeが起こるのか、気になるところですが、とにもかくにも、これがアメリカ国民の選んだ答えです。

ていうか、国民一人一人に大統領を選ぶ権利があり、かつ予備選も含めるとかれこれ1年以上も考え検討する時間を与えてもらえるアメリカが、ものすごくうらやましいんですけど。

 

かたや日本はというと。。。

下記書籍は今年7月に刊行されたものですが、福田さんが辞意を表明した直後からものすごく売れ、即増刷となったそうです。

戦後就任した歴代総理の、特に散り際にスポットをあてているのですが、人となりから就任の経緯や主な業績、退任後の人生などについてもコンパクトにまとめられており、政治に疎い私にも非常に読みやすかったです。また時系列で読み進めていけるため、時代の流れや、今問題視されている「政治家の世襲」についても「あ、あの人のお父さんはこの時この人の門下生(?)だったのかぁ。だから今・・・」などと思うこともあり、派閥とか師弟関係についても、ものすごく大雑把にですが学ぶことができます。

ただ、7月刊行なので当然、福田前首相が現役総理として最後を飾っています。

うーん、あと数ヶ月もすれば、あと2人の散り際を追加した「改訂増補版」を作れそうですね♪ 

 

『総理の辞め方』