▼‘テレビ・映画’ カテゴリーのアーカイブ

13.09.02

地味さは普遍性の証し ― 奈良県中山間地区の人びとを描く河瀬直美監督 ―

先日、訪問した奈良の先生に一服のお茶をいただき、奈良の茶畑で撮った美しい映像を思い出しました。
カンヌ映画祭でグランプリを獲得した 河瀬直美監督の 『殯の森』(2007年、日本・フランス) の一場面です。

「奈良ってお茶どころなんですってね。きれいな茶畑を映画で観たことがあるんです。」
思わず、そう話しかけたところ、すかさず

「その映画 『殯の森』 でしょう?河瀬監督はお住まいがご近所みたいなんですよ、
あちらは私のことを知らないけれど。ときどきお店なんかで見かけるんです。」

とのお答え。

河瀬監督の名前が先生の口から出るとは正直予想していなく、いささか面食らいました。
しかも地元奈良県といえ、「ときどき見かける」とは…。

奈良県を拠点に子育てしながら独自の作風の映画や小説を発表している河瀬直美監督は、カンヌでは新人賞 (1997年の 『萌の朱雀』) とグランプリの受賞、2013年には審査員として招かれるなど、高く評価され知名度も十分ですが、作品は地味そのものだし、公開は小規模でロードショーなどは一切ありません。

正直なところ、私もカンヌの受賞作という情報に興味があって最初 『萌の朱雀』、次いで 『殯の森』 と観てみたのですが、いくつかのエピソードが交えられてはいても基本的に淡淡と静かに進んでいくため「え、これが?」というのが偽らざる第一印象でした。

そこで、相手の先生もまさかご存じではないだろう、と勝手に決め込んでしまっていたのですが、 映画の撮り方や観方にルールなどないし、撮る目的、観る目的は人それぞれです。

奈良県の中山間部に暮らす普通の人びとの日常に題材を求めながら、
「人が生きること」 「次世代へと命をつなぐこと」
等を普遍的なテーマとして掲げていると、この画面下方のTED x Tokyo での語りや他で語っていることからは推測され、そのことは

「自ら披露しているその生い立ちや幼いころの体験に深く根ざしている」

と考えられるし、日本的な美しい吉野の山河を織り交ぜながら、自然光の下、自然なアングルで、まるで自分の家族がしゃべっているのを近くで聞いているように見える独特の映像(しかも出演者は大半が素人)は、やはり TED x Tokyo での語りにある、

「人が生きた証しを映像に残し、(その人がいなくなった後も)再生できることの素晴らしさ」

を映像で表して見せたものかなと思います。
不思議な感触をもつ河瀬監督の映画を言葉の壁を超え受け止めるフランスの人びとの感性、その懐の深さには改めて感銘したし、河瀬監督自らの発案による 「奈良映画祭」 などを通じて、奈良県民の方にはその存在がきっとお馴染みなんでしょうね。
さすが地元、たいへん失礼しました。


河瀬 直美監督が「映画の価値」について語った Ted x Tokyo でのトーク

『萌の朱雀』 で主役に抜擢された、奈良県五條市の当時の中学3年生 尾野真千子さんは、今や実力を兼ね備えた人気女優です。私も大好きだな。
出演作 『そして父になる』(是枝裕和監督) が2013年のカンヌ映画祭審査員特別賞を受賞しました。

ちなみにお茶は奈良産ではなく、先生の長野県在住のご親戚が無農薬で有機栽培されたものでした。とてもおいしかったです。


「殯の森(もがりのもり)」(2007、日・仏。脚本・監督:河瀬直美。出演:尾野真千子他)


「萌の朱雀(もえのすざく)」(1997、日。脚本・監督:河瀬直美。出演:國村 隼、尾野真千子他)

13.08.25

ジャンゴ 繋がれざる者 ― 改めて、祝!2作品連続オスカー(助演男優賞)受賞! ―

エンターテインメントに込められたメッセージ
痛快な西部劇仕立てではありますが取り上げられている題材は重くてシリアスなもの。
19世紀、アメリカ南部テキサス州やミシシッピ州の荒野、または綿花農場を舞台とする、アウトローと賞金稼ぎ、そして保安官。支配者層と黒人奴隷らによるスリリングなストーリーの作品です。
西部開拓の陰で白人社会の犯してきた過ち…黒人奴隷という歴史の負の部分が取り上げられています。
次のような、教育的とは対極の、しかしリアルな設定や台詞も随所に盛り込まれています。

※ マンディンゴ=奴隷デスマッチなどという、これが事実なら相当ショッキングな
   19世紀の支配層にとっての“エンターテインメント”。
※ ”NIGGER” という差別用語が連発。スコセッシ監督のオスカー受賞作
   “ディパーティッド” 中の “F**K” を思い出した…。

ただ、そうした過去の米国が犯してきた過ちから目を背けることなく、史実を正面から受け止め、反省から出発しようという気概のようなものを感じるし(リアルさの追及という意味で、 “NIGGER” は必要だったのだろう)、作品自体は往年の西部劇の名作へのオマージュ(作品名は無学にて特定できず)にあふれたエンターテインメント作品なので、嫌悪感を抱くようなことはありませんでした。
もちろん、これまでのこの監督作品と同様、血はたくさん流れるし、人によって好き嫌いの分かれる(少なくともデート向きではない)作品ではあるでしょうけれど。


挿入曲のひとつ ジム・クロウチ の ” I GOT A NAME ” 。70年代テイストに溢れていて、タランティーノのニュー・シネマへの憧憬が見て取れますね。

哀愁のメロデイに70年代ポップス…マカロニウエスタンかニューシネマか
これまでのタランティーノ作品同様、挿入歌がセレクト、タイミングとも絶妙過ぎるほどにツボをついてきます。音楽が作品にアクセントとテンポを与え、2時間半以上あるのに中だるみを一切感じませんでした。映画だけでない、監督の音楽に対する造詣の深さを感じます。
テーマ曲“DJANGO”、エンリコ・モリコーネによるオリジナルの哀愁溢れるメロデイ、そして曲名は分かりませんが一聴してそれと分かる70年代の珠玉のポップスなどが流れると、私のような“素人”でも一瞬にしてフランコ・ネロやジュリアーノ・ジェンマの マカロニウエスタンニュー・シネマ “ 明日に向かって撃て ” が脳裏をよぎるし、引きずるような重いヒップホップは黒人奴隷らの支配層に対する秘められた憤怒の心情を表すようでした。

ハリウッド・スターを食う存在感!ずる賢くて冷徹なドイツ人
演技陣の中では、 レオナルド・ディカプリオジェイミー・フォックス といったハリウッドスターらに囲まれて、前作 “イングロリアス・バスターズ” に続く2作連続のタランティーノ映画への出演、そして2作連続オスカー受賞の クリストフ・ヴァルツ の存在感が際立っています。前回と同じく、紳士的な所作でありながら、その素顔は冷酷で狡猾な、多国語を操るインテリのドイツ人というキャラクターは、2作目にしてすでに「はまり役」という感を強く抱かせ、これからもぜひ続けて観てみたいキャラクターになっています。

メッセージ性あるいはヴァルツの演じたキャラクターを考えても、エンディングでナチスドイツの非人道性に鉄槌を浴びせた前作との一連性を感じさせる作品でした。
タランティーノのジャンルを問わない映画フリークぶりは本当にすごいし、明確なメッセージを発信するようになったことで作品が一層の輝きを持ち始めた気がします。
いつか 「武士道」 をテーマに、黒沢明監督や小林正樹監督へのオマージュとなる日本の時代劇を撮ってくれないものでしょうか。



「ジャンゴ 繋がれざる者」(2012、米。脚本・監督:クエンティン・タランティーノ。出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ他)

13.07.13

切腹~三國連太郎さんの死去に際して再鑑賞(かなり遅いですが)~

モノクロの自然光を生かした映像、低くて重いゆっくりと発せられるオープニングのナレーション、そして静寂。このような静けさの醸し出す緊張感は日本特有のものです。

1962年に公開された時代劇の名作 『切腹』(松竹) は、こうして観る者すべてにサスペンスを予感させながら幕が上がります。ぞくぞくする、スリリングこの上ないオープニングです。

戦が無くなり、仕官の道が断たれた(仕事が無くなった)下級武士の悲哀をリアルに感じさせ、その日の暮らしすらおぼつかない中でも武士たちが尊重する 「武士道」 とは何なのかを問いかける脚本が素晴らしく、仲代達也、三國連太郎、丹波哲郎らの重厚な演技と、悲哀・苦痛・残酷・冷笑などさまざまな人間の感情を陰影濃く捉えたモノクロ映像にひと時も目をそらすことはできません。
ラスト近く、尾羽打ち枯らした津雲半四郎が武家に伝わる祖先の甲冑に倒れ掛かるシーンがこの映画のテーマを象徴しています。

1962年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞。国内よりも海外(欧米)で注目され、高く評価される作品というのがときどきありますが、この作品も典型的なそれだと思います。



まだまだ観たい昭和の名優、名演技

三國連太郎さんが亡くなった後、5月にこの映画と『復讐するは我にあり』(今村昌平監督)、そして『戒厳令』(吉田喜重監督)を借りてきて再鑑賞しましたが、この『切腹』も含めて「娯楽」と呼べる要素はほとんどなく、社会派ドラマだったり観念的な作品だったりで、観ていて何かを考えさせられるものばかりでした。

返して言えば、単にその時面白ければいい、というのでなく、観る者の記憶にいつまでも残る、深い感銘を刻み込むことを目指したような作品に、三國さんという役者さんは特に欠かせない存在だったのではないでしょうか。

政治的理由でもあるのかDVD化されていないのですが、『閉鎖病棟』で知られる帚木蓬生原作の日本アカデミー主演男優賞を受賞した主演作『三たびの海峡』をいつかぜひ観たいです。
きっと原作同様、一度観たら忘れられない映画だと思います。



「切腹」(1962、日本。監督:小林正樹 主演:仲代達也、三國連太郎)

13.07.08

ニーチェの馬~馬も“目”で名演技してます~

葬送曲のようなバイオリンの引き摺るような音色。
風が吹き荒び、陽光は厚い雲に遮られている。
不安感をあおり、観る者に胸騒ぎを覚えさせるファーストシーン。

        「ニーチェの馬」

ハンガリー映画界の巨匠 タル・ベーラ監督が自ら最後の作品と公言するこの映画を見て、まず印象的だったのはワンカットの異常なほどの長さです。先のファーストシーンをはじめ、ほぼすべてのカットで5~6分は当たり前。なのにその間セリフは断片的でわずかなもの。
じれったいとすら思えてくる長ーいカットは、

すぐそこにあるのに、手に入れるにはたくさんの手続(ルーチン)と長い時間を要し、ただの1つも端折ってはごく当たり前の暮らしさえ送ることができない…。

とでも言わんばかりに主人公の貧しい農夫父娘のもどかしさ、生きにくさを象徴しているかのようです。
そして、物語の間じゅう音を立てて吹き荒れる暴風。馬は動かずどこにも行けない。水汲みのため家と井戸を往復、あるいは家と馬小屋との往復だけの日日。淡淡と過ぎてゆく「昨日と変わらない」貧しい農夫父娘の時間。吹き荒れる風の中、窓から見える景色も同じ。

やがて、ありふれた毎日の中、2日目、3日目、そして4日目と、連日のように奇妙で微かな「ずれ」が起こり、それまで何年も変わることのなかったであろう父娘の日常は少しずつ揺さぶられていく…。そして暴風が過ぎ去った後に来たものは…。

「長い時間をかけて少しずつずれが生じ、いつの間にか(だれも気付かないうちに)後戻りできない大きなずれになっている…。」

これは、映画監督 吉田喜重氏が分析する小津安二郎監督の家族観、小津監督が一貫して作品に「家族」を取り上げては描き続けた普遍的な家族のありようですが、様相はかなり異なるものの、自らの運命を自ら選ぶことはできない、という点でこの作品にも同様の世界観を感じました。

小津監督が「昨日と変わらない1日」を短いカットで淡淡と描く一方、それが大きなずれを生むまでを気が遠くなるほどの長い年月で表現していくのに対し、
あたかも何かが起こるようで結局何も起こらない長い長いカット、でも気付けば毎日のように何らかの「ずれ」が起き、主人公を追い込んでいくことなど、その手法は対照的と言っていいほど違います(そもそも作品中で父娘が家族であると意識させる場面がほとんどない)が、ひとびとの暮らしが内面、外面(ひとびとを取り巻く環境)両方の影響によって少しずつずれていくこと、その行く末はたとえ自分でも予期することはできない…という普遍的なテーマを感じました。

終始、まったくと言っていいほど愛想がない作品ですが、それにしても画像の重厚さには引き込まれっぱなしで、オープニングで抱いた胸騒ぎが止むことは最後までありませんでした。


[2011、ハンガリー・フランス・スイス・ドイツ合作、タル・ベーラ監督]

13.06.17

ブリキの太鼓 ―せっかくなのでディレクターズ版も…観たいなあ―

1979年、私がまだ高校生の頃に名作の呼び声高く、カンヌ映画祭のグランプリ「パルム・ドール」とアカデミー外国語映画賞をダブル受賞した映画

        「ブリキの太鼓」

は、第二次大戦前夜、ドイツ、ポーランド国境近くに存在した自由都市ダンツィヒ(現在はグダニスク)を舞台にしたドイツ人のノーベル賞作家 ギュンター・グラスの小説(主人公の設定は作者本人かな?)の映画化です。

ディレクターズカット版のBlu-rayディスク発売(2012年11月)を祝し、でもオリジナル版ノーマルDVDで、今さらながら鑑賞しました。なんでオリジナルやねん…。

独立都市国家という特異性とそのロケーションからナチスによる侵攻の最初の標的となり、ナチス・ドイツとポーランドとの激しい綱引きに晒されたダンツィヒ。
ドイツ人、ポーランド人、そしてカシューヴ人とそれぞれに立場が異なり、それゆえ運命が大きく左右されてしまう家族の人びと。

第二次大戦前夜から終戦後にソ連軍が進軍してくるまで、という、どう料理しても暗くならないわけのない舞台設定であり、ストーリーですが、主人公オスカル少年の “超能力” のためか、どことなく寓話的というか幻想的で、観終えた後不思議な余韻を引く映画でした。

ただ、時代背景を象徴するのか、あるいは人間の内面を表現したのか、原作に忠実ということのようですが、かなりダークでおどろおどろしい描写もあり、確かに「名作」ですがその点は好き嫌いが分かれそうです。

原作を読んだわけではないので分かりませんが、自らドイツ人の父とカシューヴ人の母を持つ作者 グラスはドイツ人として史実を冷めた視点から伝承し、その時代の空気やそれぞれの立場でダンツィヒに生きた人人の心持を代弁する役割を自ら担ったのかな、と思いました。

ところで、ドイツ人でもポーランド人でもなく、帰属する土地が無いからと、少数民族 カシューヴ人という自らの出自を嘆く祖母のシーンも印象深く観たその日(6月16日)の夜、安部首相の東欧訪問、ポーランド共和国のドナルド・トゥスク首相との会談、そして共同声明の模様がニュースで流れました。
トゥスク首相はカシューヴ人とのことです。
タイミングの良さもあり、過去の背景などまったくの無知だった私ですがこれにはちょっと感動を覚えました。
かつての自由都市ダンツィヒは、今ポーランド最大の港湾を抱く都市グダニスクとなっています。



[1979、西独・ポーランド・フランス・ユーゴスラビア合作、フォルカー・シュレンドルフ監督]

※ オリジナルから31年、20分に及ぶ未公開シーンを収録しています。

13.06.10

フジコから始まる音楽の旅(JOURNEY)

音楽のある生活、っていいものですね♪
私は元々、特別音楽が好き!というわけではなかったのですが、
今年5月は、結果的に「音楽強化月間」となりました。

はじまりはフジコ。
もう何年前になるのでしょう。とあるドキュメンタリー番組で紹介されてから、そのドラマティックな人生とあいまって、一躍人気となったフジコ・ヘミング。
彼女の「ラ・カンパネラ」を、いつか生で聞いてみたいとずっと思っていました。
岡山に来てくれると知り、(フジコの)年齢的なことも考え、ついにその「いつか」を決行することになったのです。


「フジコ ~あるピアニストの軌跡~」[DVD]

「奇跡のカンパネラ」[CD]

200年前のものだというゴージャス&シックなフランス製アンティークドレスで登場したフジコ。
すごく似合っていて素敵でした☆
そして演奏がはじまり・・・・・・。
良かったぁ・・・。(´Д`)ハァ…
正直、ちょっと「あれ?」と思ってしまった部分もあったのですが、
きっとそれらも含めてのフジコなのだと思います。
独特の表情がつけられた彼女の演奏は力強くも温かく、ときに切なく、涙を誘う。(;△;)
楽しみにしていた「ラ・カンパネラ」はもちろんのこと、ショパンもすごく良かったです。
ショパンは昔から好きでCDも持ってはいるのですが、フジコが奏でるショパンでなければ、もう満足できない体になってしまった気がします。

「憂愁のノクターン」[CD]
ノクターンがもっと入ってるといいのに!

そして翌週末は、
大野雄二&ルパンティック・ファイブによる「ルパンティック ジャズ・ナイト」
奇しくも、前週からの「ふじこ」つながり(フジコvs.不二子)でした!

私は純粋に音を楽しみ、「やっぱジャズ、かっけ~!(格好いい)」と心の中でつぶやきつつ堪能していたのですが、ルパンファンの方ならさらに思い入れたっぷりに楽しめたのだろうと思います。

そうそう、メンバーの中に、ボストンのバークリー音楽大学に留学歴ありという人がいて、昨年訪れたボストンのことが思い出されました。
ニューヨークの駅や街角で演奏していた人たちは、いかにもストリートミュージシャンって感じの風貌(偏見?)だったのですが、ボストンで見かけたのは、ちょっとええとこの学生さん風で、有名な音楽大学に通っている若者かしら?なんて思っていたんです。

LUPIN THE THIRD「JAZZ」

続いては、音楽ドキュメンタリー映画を2本鑑賞。

まずは「ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン」
無名のフィリピン人シンガーだったアーネルが、新しいリードボーカルを探していたジャーニー(JOURNEY)のメンバーによってYouTubeで見出され、新ボーカルとして迎えられる!
ネット時代ならではのサクセス・ストーリーです。

人は生まれながらにして平等ではないし、努力が報われるとも限らない。
でもだからこそ、ごくごくまれに、諦めなければ夢をつかめることもある、そんなおとぎ話に激しく胸が躍るのです。o(^o^)o ワクワク

「ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン」 [DVD]

「ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン」 [Blu-ray]

小柄で童顔、「いかにもアジアン」な彼が、40歳にしてつかんだアメリカン・ドリーム。
「Don’t Stop Believin’」の歌詞は、彼の人生にリンクする。

だけどこの映画は、ただのサクセスストーリーに留まらない。
メンバーが語る「成功に伴う代償」の話は興味深く、ジャーニー(JOURNEY)というバンドが抱えていた問題、それゆえの葛藤やプレッシャーなどもリアルに感じることができました。
そして何より、アーネルの伸びやかな歌声は心地よく、小さな体でステージを飛び跳ね、キラキラした瞳で走り回る姿に魅了される。
そしてサラリと語る過去の断片、謙虚で真摯な姿勢に胸を打たれる。o(iДi)o
彼を見つめるおじさまメンバーが、すごくうれしそうで、優しい目をしていたのも印象的。

「LIVE IN MANILA」 (BLU-RAY) (2010)

「Live in Manila」 [DVD] [Import] (2009)

彼らの旅(JOURNEY)はまだまだ続く。
苦労に苦労を重ねてきたからこそ、完璧な幸せなどない、人生にはトラブルがつきものだということを、アーネルはよく分かっている。
彼がやっと掴んだ幸せが、どうか少しでも長く続きますように、彼の周囲が少しでも平穏でありますように、数多の誘惑にも負けることがありませんようにと、願わずにはいられない。

オールドファンのみならず、私のように「glee」からジャーニーに入りました、というような人でも、十分に熱くなれる映画だと思います♪

「glee/グリー 踊る♪合唱部!?」 vol.1 [DVD]

Glee: the Music-Journey to Regionals Ep [EP, Import]

「グリー 踊る♪合唱部!?」<シーズン1>Volume 1 [Soundtrack]

そしてもう1作は「シュガーマン」
こちらも永い不遇の末に起きた奇跡のお話。

「シュガーマン 奇跡に愛された男」 [DVD]


「シュガーマン 奇跡に愛された男」 [Blu-ray]

印象に残っているシーンの中に、「シュガーマン」ことロドリゲスが、土木作業の仕事に行く際も、スーツ姿で格好良く出勤していたというエピソードがありました。
それは決して「格好ばかり気にして」とかそういう話ではなく、姿勢の問題なのです。

そして思い出したのが、昔ドキュメンタリー番組で見た、あるホームレス男性のこと。
小奇麗なシャツを着て、丁寧に入れたお茶を飲みながら折り畳みチェアに座って本を読むその姿は、普通の、というかむしろ、休暇にアウトドアを楽しむ上品な紳士といった風情でした。野宿生活であっても毎日きちんと身なりを整え、意識して規律ある生活を心がけていると言っていました。

昔東京で出会った「ビッグイシュー(※)」販売員さんにもそんな人がいました。
それ以前に大阪で見かけた販売員さんは、ちょっと近寄りづらい雰囲気で、気弱な私は声を掛けることができなかったのですが、東京で出会ったその人は、身奇麗でとても感じがよく、何でこの人が?と思ってしまうような人でした。もっと近ければ定期購読者になって応援するのにと、残念に思う反面、きっとこの人なら大丈夫だろう(這い上がれるだろう)とも思いました。

易きに流されがちなのが人間です。
もしも縛りがなくなれば、私なんてどんどん自堕落番長になってしまいそうで怖いです。
どんな状況にあっても、その場でできることに身を尽くし、自分を律することができる人って、すごく尊敬します。

※「ビッグイシュー」:ホームレスの自立を支援する雑誌。
  ホームレス自身が路上販売し、1冊300円の内160円が販売者の収入となる。

『ビッグイシューと陽気なホームレスの復活戦―THE BIG ISSUE JAPAN』

『ビッグイシューの挑戦』

そして、どんなに周りの状況が変わっても、ブレない男、ロドリゲス氏は、招待されたアカデミー賞受賞式への出席も、(土木の)仕事があるからと断ったのだそうです。カコ(・∀・)イイ!!

映画の中で、印税のことだけがどうしてもモヤモヤと気になっていたのですが、このサントラの売上は、ちゃんとロドリゲスさんに渡るそうです。みんな、ポチってあげて!

「シュガーマン 奇跡に愛された男」オリジナル・サウンドトラック

13.02.22

 ネロが焦がれたルーベンス + 「怖い絵」

今日も仕事が終わらない。
パトラッシュ、僕はもう疲れたよ・・・。


『フランダースの犬 』

完結版『フランダースの犬 』DVD

あの時のネロと同じような気持ち(?)で、私も今、ルーベンスの絵を眺めています。
デスクに置いた卓上カレンダー。「大エルミタージュ美術館展」で昨年購入したものですが、2月を飾っているのが、ちょうどルーベンスの絵だったのです。
(ネロが見たのとは別の絵ですが)

前ブログで書いた名古屋遠征。実はミュージカル観劇の他に、この展覧会(in名古屋市美術館)訪問も目的の一つでした。

訪れたのは、『怖い絵』シリーズなどでお馴染み、中野京子氏の記念講演開催日。
到着した開演1時間前には既に満席。さすが中野先生、大人気です!
私は立ち見で参加しました。


『怖い絵 泣く女篇』文庫

「絵を見るのに理屈なんていらない。ただ感じればいいんだ。」という人がいます。
確かにそういう絵もあるのでしょう。でも、絵を描くことに意味があった時代、その時代特有の風俗や背景を知らなければ、感じるものも感じられない。
そんなことを教えてくれたのが中野氏でした。


「たとえばドガの踊り子の絵。当時のパリの常識では現代と全く異なりバレエはオペラの添え物でしかなく、バレリーナは下層階級出身の、娼婦と変わりない存在でした。それを知っているといないのとでは、ドガの作品が与える印象は180度といっていいほど違ってくるのではないでしょうか。」

                            (中野京子著『「怖い絵」で人間を読む』より)

絵画を「読み解く」ということ。
私のように絵心皆無な人間にとって、ただ「感じろ」というのは存外にハードルが高いもの。
だけど時代背景や人物の関係性などの予備知識を持って、そこに込められただろう想い、繰り広げられたかもしれないドラマを妄想しながら眺めることを始めると、それが俄然面白くなってくるのですo(*^^*)o。


『「怖い絵」で人間を読む』
お話は面白く、サインもいただき、満足しました

「歴史は勝者が作るもの。」
「見方を変えれば、物事はまったく違ったふうに見えてくる。」

講演会での中野氏の言葉はウィキッドにつながり、また以前聴いた吉村作治氏講演会でのお話も思い出されました。

「海の魚たちを描いた壁画(とか道具)があったとする。それを見た人はまず、昔この辺りは海に近かったのだと思うだろう。でも実際にはその時代、そこは海からかなり離れていたことが分かったりする。遠いからこそ、めったにお目にかかれないからこそ、いつか見た(聞いた)海や魚に憧れる。身近にあるものでなく、憧れや渇望を描き残すということもある。」
その話を聞いた時、「目から鱗」がボロボロとこぼれ落ちたような気がしました。
魚だけに・・・・・・(^^;) 。


『ルーベンス ネロが最後に見た天使』

ネロも焦がれたルーベンス。
カレンダー掲載作品の他、展示の中にあったのが「ローマの慈愛」。
これがなかなかの衝撃作でした(゚д゚)。
「これぞ究極の慈悲!親子の絆!」と感動する人もいるのでしょうが、人間が未熟だからか、母性が欠けているせいか、私は生理的にちょっと・・・と思ってしまいました。
ネロ、ごめん。

とはいえ、巨匠といわれる画家たちでも、ゴッホをはじめ生前ほとんど評価されていなかったという人は多く、逆に現役時代は人気があっても、それが後世まで続くという人もまた、まれだといいます。
生前から名声を博し、現在に至るまで高い人気を保ち続けているルーベンスが、とても稀有な存在であることは間違いありません。

ルーベンスの他にもレンブラントやモネ、セザンヌ、ピカソ、マティスなど、時代・ジャンル共に幅広い作品が展示されていました。
レンブラントがよかったなぁ。

公式MOOK

『ロマノフ王朝の至宝』

12.10.22

 いいプレイをする奴なら、
     肌が緑色の奴でも雇うぜ

またまたお久しぶりです。
終わらない繁忙期、・・・。追われ続ける日々・・・。
いつか・・・、落ち着ける日は来るのでしょうか。
というわけで、気分転換に久しぶりのブログ投稿です。

9月の始め、名古屋に行ってきました。
メイン目的は、ミュージカル「ウィキッド」を見ること。
実は本場ブロードウェイでミュージカルを見る!という野望があり、そのための予習だったのですが、数ある作品の中で、なぜ「ウィキッド」なのかといいますと・・・、
アメリカンドラマによく出てくるから
「アグリー・ベティ」しかり、「glee」しかりです。

アメリカでは、ミュージカルなどのショービジネスが生活に浸透しているのだろうなと思うと共に、そこに登場する作品を知れば、きっとドラマもさらに深く味わえるだろうと思ったのです。

「アグリー・ベティ シーズン1」コンパクトBOX [DVD]

観劇したのは千秋楽の前日。
千秋楽1週間前からカーテンコールがスペシャルバージョンになるということもあってか、常連さんと思しき人の姿が多く、初心者の私は少々緊張しておりました。
ですが、結果、すごく、すごく良かったです!!!
ありきたりすぎる台詞は使いたくないけど、でもまさに
「感動をありがとう!」って感じでした。
一幕終わりの曲「自由を求めて」(原題は「Defying Gravity」)は特に素晴らしく、心が震えました。感涙。・゜゜・o(iДi)o・゜゜・。
休憩時間に入ってからもしばらく動けず、ぼーっと余韻に浸っておりました。

「glee」で、レイチェルとカートが歌姫対決した時の曲がこの「Defying Gravity」。
あのエピもよかった☆

「glee/グリー」DVDコレクターズBOX

グリー 踊る♪合唱部!?<シーズン1>Volume 1 [Soundtrack]
   

「ウィキッド」は『オズの魔法使い』のプロローグというかアナザーストーリー。
少女ドロシーが出会った二人の魔女(西の悪い魔女エルファバと南の良い魔女グリンダ)が主人公。
緑色の肌と魔法の力を持って生まれ、自由と正義を求めたはずの少女エルファバが、なぜ邪悪な魔女と呼ばれるようになったのかを描いた物語です。

『オズの魔法使い』

「オズの魔法使」特別版 [DVD]

   

児童文学がモチーフとはいえ、これが侮れません。
正義とは何か。多数派=善なのか。そんなことを問いかけられる。
幅広い世代で根強い人気を誇っているのが分かる気がしました。

権力を守るためにわざと「共通の敵」を作るという、今もよくある政治手法。
「歴史は勝者が作るもの。それが真実かどうかは分からない」
数時間前に聞いた中野京子先生の言葉がよみがえりました。

世間一般では「多くの人が信じたもの」が正しく、真実であるとされる。
とりわけ日本人は「みんな」という言葉に弱く、「みんな」の決めた事柄には、常に絶対的権威と正当性が与えられてきた。
数ヶ月前に刊行されたこの本の中にも、そんな「みんなの力」の強さと危険性、「〈みんなで決めたことだから正しい〉という判断基準について」書かれている部分がありました。
とても読みやすくて面白いと思います

権力の社会学

 .

「みんな、頭からっぽだから、何だって信じるんだ」フィエロの言葉。
皆が考えることをやめた時、与えられるものをただ享受し、疑問を持つことをやめた時・・・。
そんな映画もありました。

これも結構おもしろかったです。

『26世紀青年』DVD

大満足だった「ウィキッド」初観劇。
ブロードウェーへの期待もますます膨らみましたo(*^▽^*)o~♪


ミュージカル「ウィキッド」劇団四季版

12.02.02

現場刑事の告発

年が明けたと思ったら、瞬く間に1月が終わり、もう2月!
矢の如し光陰が恐ろしすぎます((((;゚Д゚))))

 

実は弊社は12月決算で、1月は日常業務に加え、印税計算や棚卸といった決算業務に忙殺されておりました。

システマチックにオートマチックにできればいいのですが、あっち見てこっち見てウンウン悩んで・・・というかなりのアナログ作業でして、これが結構大変なのです。
そして、さらにもう一つイレギュラーなお仕事が発生し、初めて取り組むことでもあり、思い悩みながらも、さらにバッタバタしておりました。
そして、やっと一段落つきました。(´▽`) ホッ

 

 

『現場刑事の告発』っていう本が欲しいんですけど、おたくから出てますよね?」
2週間ほど前から、こんなお問い合わせが頻発しています。

 

何だか面白そうですが・・・、残念ながら弊社の出版物ではございません。

 

書店さんのお話を総合すると、
 ・TV番組「奇跡体験!アンビリバボー」の中で紹介されていた
 ・10年以上前くらいに「ふくろう書房」(惜しい!)から自費出版された
ということのようでした。

 

少しでも「面白そうかも」と思えるものはとりあえず録画予約しちゃう派の私は、家に帰り早速探してみました。すると・・・、ありました!「アンビリバボー」。
でかした私!(゚ー^*)d Good job♪

 

戦後最大のミステリーといわれる「二俣事件」を担当した刑事が、事件の真相を綴ったという本がそれで、番組ではドラマ仕立てでその顛末が語られていきます。

 

・・・ひどい話です。
明らかな冤罪なのに、戦後なのに、正義の告発者はむごい仕打ちを受け、名誉を回復することも叶わなかった・・・。
今なら、番組HPにも放映内容が掲載されていますので、詳しくはそちらをご覧ください。
(1月19日オンエア 「二俣事件 山崎兵八刑事の一生」)

 

これは、読みたくなりますね。
ただ、出版ではなく、書店流通しない(ISBNの付かない)印刷物だったのかもしれないですね。
絶版であろうが日本の出版物はすべて網羅されているはずの国立国会図書館データベースにも登録されていなかったし、番組内でも「出版されました」ではなく「自費出版という形で製本された」と言っていたので。

 

これも何かの縁ということで、ふくろう出版から出版(復刊?)できたらいいですね。

 

冤罪を生み出す構造とはどういうものなのでしょう。 

『足利事件(冤罪を証明した一冊のこの本)』

 

『冤罪の軌跡―弘前大学教授夫人殺害事件』

   
   
そして、告発者の不遇は続く・・・。
と思いきや、長い闘いの末、勝利を勝ち取った人もいました。
『ドキュメント・仙波敏郎 -告発警官1000日の記録- 』

  
『現職警官「裏金」内部告発』

12.01.12

ティーバッグに夢中です

新しい年がスタートしました。
2011年は未曾有の大災害に見舞われた大変な年でしたが、そんな極限状態の中でさえお互いを慮り譲り合う姿、各々が分を尽くし務めを果たす姿勢には、日本の強さ、誇るべき国民性に裏打ちされた底力を感じることにもなりました。
オリンピックに各国大統領選挙など、色々と変化がありそうな2012年ですが、ふくろう出版にも何かが起こりそうな予感がしています!
ブログの方は相変わらずの気まぐれ更新ですが、生暖かく見守っていただけましたら幸いです。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます(o*。_。)oペコリ。

 

そんな中、今さらですが、アメリカンドラマ「プリズン・ブレイク」にはまっています。
数年前に途中までは見ていたのですが、お正月に一気見する機会があり、改めて見始めたところ・・・、やだ、おもしろい。。。
息もつかせぬ展開が、寝不足を招きすぎて困ります。

 

「プリズン・ブレイク」シーズン1 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

 

ご存知ない方のために、ざっくりあらすじを書きますと、
副大統領の弟を暗殺した罪で逮捕され死刑判決を言い渡された兄と、兄の無実を信じるIQ200!の天才弟が、兄弟での脱獄を企てる。背後には巨大組織の陰謀が?!というお話。

 

「プリズン・ブレイク」シーズン2 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

 

個性豊かなキャラクターが沢山でてくるのもこのドラマの魅力。
最初の頃は「死ねばいいのに」とさえ思っていたのが、回を重ねるにつれ
大嫌い!!

悪者だけど憎めない

やばい、ちょっとキュンときた

もう君のことしか見えない!!

とまで印象を激変させるのだからたいしたものです。
そしてそんな存在の最たるものが、凶悪犯「ティーバッグ」なのです。

 

生い立ちからくるトラウマやコンプレックス、孤独感。
そしてそれゆえの渇望や葛藤がすごく切なかったですo(iДi)o

頭の回転が速く、時にコミカルで、弁もたつティー様。
もしも何かが、ほんの少し違ったら、誰かが、タイミングが、ほんの少しでも違っていたら、全く違った人生があったのではないかと思わずにはいられない。

 

そして夢の中にまで彼が現れるようになった(彼に惚れている設定。だけど私は逃亡のために利用されるだけの女。殺されなくてよかった・・・)今日この頃、現実世界でも脱獄事件が報道され、ちょっとビックリしています。
広島刑務所って市街地のほぼど真ん中にあるんですね。
現実となると、やっぱり恐いですね((((;゚Д゚))))。

 

全シーズン収録の限定版ブルーレイ

「プリズン・ブレイク」コンプリートブルーレイBOX

 

 

そういえば、刑務作業にも地方独自のものがあって、岡山刑務所には「備前焼」があるそうです。
ちょっとうらやましい・・・というと語弊がありますが、いいですよね。土ひねり。
一人で無心に土と向き合う。心の平安も得られそうな気がします。
長期の受刑者が多いため、かなり熟練もしていて上手いのだそうです。

 

人間国宝故山本陶秀を父に持ち、自らも備前を代表する陶芸作家として活躍する著者による、「鑑賞」ではなく「制作」側からの備前焼入門書がこちら。 

『備前焼の魅力と技法』

 

そして山口刑務所には「萩焼」があるそうです。
萩焼もいいですね。淡いピンクっぽいのとか、色味が柔らかくて、トロンとした感じがかわいいですよね(*^-^*)。