▼2008 年 11 月 27 日 のアーカイブ

08.11.27

2000年前からインターネットがあった!?

もしも、2000年も前からインターネットがあったとしたらどうでしょう?
ネット検索などしていると、削除されたはずの古いページ(キャッシュ)がひょっこり出てくるということはよくあり、WEBには、そういった古い情報の痕跡があちこちに残されています。

 

歴史Web修復委員会では、すでに削除された歴史的ページの痕跡を長年探索し続け、この度ついに、2000年前から蓄積されてきた膨大な量のキャッシュを発掘したのである!
そしてそれを修復、現代語へ翻訳したものの一部をここに紹介する。

 

・・・という設定で作られたのが、本日ご紹介する本『歴史Web』。
いやぁ~、これがめっちゃくちゃ面白かった!

 

弥生時代から幕末まで、歴史上の様々な事件をホームページにしており、有名人のブログから掲示板、まとめサイト、Not Foundのページなど、ネットでよく見かけるサービスをうま~く歴史にあてはめていて、とにかく面白い!面白すぎてどこをピックアップすればいいのか、もう分かりません。
邪馬台国公式本家頁から始まり、時系列で様々なページが紹介されています。
竪穴式住居に住む主婦のブログは「ドキ♥ドキ♥私の土器これくしょん」だし、前方後円墳を建設する業者のホームページもある。よくある質問として「工期はどれくらい?」の他に「昔ながらに、生きている奴隷を埋めたいんだけど?」なんてものまであり、それをやめるために埴輪が作られた(という説もある)という歴史背景にも思いをはせることができます。

 

「弐ちゃんねる」なる掲示板はかなり古い時代からあった様子。

 

大化の改新キターーーーーーー(°∀°)ーーーーーーーーー !!!!!!

 

などと盛り上がっております(≧▽≦)

 

奈良時代には天尊(あまぞん)なるおんらいん書店が登場。といっても当時の本といえば『古事記』と『日本書紀』くらい。『聞き書き古事記(上)』、『よい子の古事記』、『もう一つの古事記』など様々な古事記が今月の売れ筋順位一位から五位までを独占中です(爆)
『古事記(愛蔵版)』の「読者評価」。
「てゆーかー、結局は皇室の自慢話なわけでしょー。こんなもんで国家統一しようとしても別に、って感じ。漢文体ばっかじゃなくて万葉がな入ってるのは良かったけどね、しゃべり言葉に近くて。今度出る日本書紀は似た内容で三十巻でしょー。長すぎ。」
何かすごくありそう、というか言いそーって感じですよね。

史実には忠実に寄り添いながら、ネット用語というか、ネットでの表現はすごくリアルでネーミングセンスも抜群!うまいよなーと思います。

 
平安時代に入ると、清少納言はブログで枕草子(枕のぶろぐ)を書き、紫式部もブログで源氏物語を連載しているようです。「この世をばわが世とぞ思ふ」藤原氏と「平家にあらざる者は人に非ず」の平家が運営しているのはもちろん、一族一門だけの会員制サイトです。

 
ちょいちょい出てくる掲示板も本当によくできていて面白い。スレタイトルだけ見ても、ちゃんと時代を感じることができます。「中大兄皇子って性格悪いんじゃね?スレ」、「所有地を返せ!豪族の怒りぶつけようスレ」、「最澄と空海が喧嘩している件について。」、「清少納言っていろんな意味でどうよ?」、「源平どっちが好き?腐女子筋連(すれ)」などなど。
リアルタイム更新のニュース板『桶狭間で、なんかあったらしい』では「管理人の判断で荒らし中傷と判断した投稿は即、奇襲いたし申す。」という注意書きがあるのにも笑った。

 
また、重大事件については複数ページからその成り行きを伺い知ることができます。明智光秀の「十兵衛日記」が、本能寺の変当日に「接続が集中し、大変つながりにくい状態」となり、その十一日後には「管理者により削除」される。その一方で「秀吉のさるさる日記」では「殿の敵を討ちとったり!」という記事がみられる、という具合。

 
江戸時代初期、武士・浪人のアルバイト情報サイトに豊臣方、徳川方双方の仕事情報が載っているのも興味深い。豊臣方が募集するのは、籠城して徳川軍と戦う「いくさのお仕事」。「関ヶ原経験者優遇」とあり、「こんな人が一緒に働いています!」として真田幸村らの名前があげられています。一方の徳川方は、大阪城の濠を埋める「急募!ガテン系のお仕事です!【未経験者歓迎】」とある。「難攻不落といわれた名城の城攻めに参加して、あなたも歴史を作ってみませんか?」っていうコピーもすごく上手い!ありそうですよねぇ。

 
ある藩主の長男が書くブログ「ぼくの参勤交代論」もいい。

「父上がいなかったときのほうがぜんぜんきらくで良かった。父上なんかいなくていい。また一年後が待ちどおしい。」という記事に対しコメントが続く。

「ぼくも思うよ、おやじがいないほうが気楽・・・」「わたしはやっぱり家族はいっしょがいいな・・・」「参勤交代になってから、うち小遣いへった」「ごはんのおかずがひとつへった・・・」「かいわがへった・・・」

切ない。。。何だか現代の単身赴任家族とだぶって見えました。
五代将軍綱吉のブログは、皆様予想通りだと思います。

「うちのワンコは日本一!」
やっぱり。。。

 

高校時代の日本史は、とりあえず暗記するしかなくて、面白いものではありませんでした。
ですが歴史上の様々な出来事も、ネット住人目線で描くことにより、実にいきいきと鮮やかに浮かび上がり、とても身近に感じることができました。
とりあえずざざっとならば2時間くらいで読み終えると思いますが、例えばバナーや外部リンク、コメントを入れているのは誰かなど、細部にいたるまで小ネタが満載で、何度でも読み返したくなるのがこの本。面白いだけでなく、すごくよくできている。「構想2分制作2年」というのも頷けます。ちなみに、邪馬台国や幕府のオフィシャルサイトは地方自治体のサイトをイメージし、わざとダサめに作られたのだそうです(^▽^;)

 

「歴史」は、歴史上の人物が作ったのではない。権力が欲しかったり、金儲けをしたかったり、自己表現をしたり、グチったり、他人をねたんだり・・・・・・という、私たちと同じ人間の営みの蓄積が、結果として「歴史」になるのだ。まさに、二千年にわたる、人々の思いを記録した貴重な記録。当時の人々の息づかいを、感じて欲しい。 (「まえがき」より)

 

 

 
表紙のノートパソコンに向かっている人は源頼朝だと学校で習いましたが、近年これは頼朝ではないという説が有力となっているようです。
でもでも、すごく面白いのでお薦めです。買いです!